SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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オリコン訴訟、現状など
先日の週刊誌シンポジウムの詳しい内容が、Business Media 誠 のサイトに掲載されています。Business Media 誠 では、高額賠償請求訴訟を多数抱えることになった「週刊現代」の前編集長・加藤晴之氏へのインタビューも掲載されています。あらためてシンポジウムのログを見て、なかでも印象に残ったのは、佐野眞一氏が週刊新潮が起こした誤報問題にからめて発言した次のひと言でした。

Business Media 誠:集中連載・週刊誌サミット:編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編) (2/3)
本当に今の気持ちは、「情けない限り」で一杯だ。しかしこういう問題は、メディア同士で批判しなければならない。だが同業他社だからといって手心を加えるというのは、それは“八百長”だ。そういうことが読者に見破られているのではないだろうか。

手心ではないけれど、対峙すべきテーマや人をスルーしてしまえば、読者に見透かされる時代であることを肝に銘じないといけません。なんとなく当ブログは、高裁に移行してからのオリコン訴訟の経過を読者の方に伝えしようとしていませんでした。そうしたまま、SLAPPの切り口から、あれこれの裁判に考えをめぐらすのもバランスを欠くような気がして、情報収集も発信も滞ってきたような気がします。

オリコン訴訟は高裁に移行してから、弁論準備という非公開の形式で進められていて、すでに13回の話し合いがもたれている状態です。最終的な段階に近いという見方もあるようです。訴訟について気になっている方に、少し現状をお知らせするエントリーでした。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 20:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリコン訴訟、高裁での烏賀陽側提出資料公表
オリコン訴訟は、9月16日から東京高裁で、控訴審が始まっていますが、その控訴審にて烏賀陽側が提出している主な書面等が、UGAYA Journal.のサイトで読めるようになっています。控訴にあたっての理由書、証人申請した人物など控訴審での証拠の目録にあたる証拠申立書、烏賀陽側の立場に理解を示すよう求める表現者を中心とした意見書といった内容になっています。

http://ugaya.com/column/080422oricon_index.html

*控訴理由書
(一審はなぜ誤っているかを解説した2審での訴状にあたる最重要書類)
*証拠申立書
(高裁で新しく提出する新証人、新証拠の目録。裁判所が証拠申請を認めるかどうかが注目される)
*佐高信氏の意見書
*江川紹子氏の意見書
*国際NPO「国境なき記者団」駐日代表ミシェル・テナン『リベラシオン』東京支局長の意見書
*出版労連の意見書
*フリーランサーの労組/出版ネッツの意見書

以下は、ミシェル・テナン氏による意見書の一部です。
現代の日本のような民主主義国においては、報道の自由や表現の自由は憲法で保障された基本的人権です。しかし、私が敬愛する友人である樋口陽一・東大名誉教授が私に繰り返し語ったように、こうした基本的人権は常に攻撃にさらされるため、常に守らなければいけないのです。私の祖国であるフランスでも、報道の自由を守るため行動しなければならないことは同じです。
 しかしながら、このオリコン対烏賀陽裁判のような訴訟自体が、フランスではありえません。フランスでは表現の自由はある種「神聖な権利」とさえいえます。ジャーナリストや文筆業者は企業への疑問を公に表明することができます。こうして批判された企業はジャーナリストを攻撃するのではなく、ただ単純に「反論権」(Droit de response)を行使することにより反論するのです。
 オリコンがフリーランス記者や文筆業者に提訴という形で法的争いを仕掛けたことは、海外メディアや報道の自由を守る国際組織にとっては「純粋な復讐または脅迫目的の行動」に見えます。これは明らかに公権力の濫用であり、社会正義のための行動ではありません。
 また、フランスはじめEU諸国では、ニュースソース(取材源)だけを訴え、編集部や出版社を被告から外すというオリコン裁判のような提訴のあり方はまったく考えられません。
 ゆえに、東京地裁での一審判決がいかに外国の報道機関を仰天させたか、ご想像いただけると思います。「国境なき記者団」の「2008年版世界報告書」日本の章には、オリコン訴訟が「非常に憂慮すべき事態」として記載されています。09年版では、この問題がよい方向で解決し、記述が消えるように願ってやみません。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 21:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリコン訴訟地裁判決後、各所での言及
タイトルどおり、オリコン訴訟地裁判決に関連したものを収集。

⊡サイゾー6月号 山形浩生 山形道場[第109回] 言論の自由周辺で二題

⊡判決 | オンライン日記 武田徹
http://162.teacup.com/sinopy/bbs/843

⊡ブログのリスク:横山哲也の100年Windows:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20080508/300931/

⊡【オリコン訴訟 判決批判1】東京地裁・綿引穣裁判長のSLAPP(恫喝訴訟)容認論の虚偽 (諸野脇 正の闘う哲学)
http://shonowaki.net/2008/04/post_38.html
⊡【オリコン訴訟 判決批判2】オリコンが明言した「殺意」を無視する異常な判決 (諸野脇 正の闘う哲学)
http://shonowaki.net/2008/06/post_41.html

⊡オリコン訴訟〜耳を疑うような不当判決(北健一)
http://www.labornetjp.org/news/2008/1208919619205staff01

⊡ハコフグマン: オリコン訴訟判決について
http://elmundo.cocolog-nifty.com/elmundo/2008/04/post_603f.html

⊡livedoor ニュース - オリコン裁判の判決で、出版の自由が危ない=出版流通対策協議会がセミナー 伊藤昭一
http://news.livedoor.com/article/detail/3654102/

⊡出版労連 - 出版労連結成50周年記念 第35回出版研究集会
http://www.syuppan.net/modules/smartsection/item.php?itemid=83
6月19日、文京シビックセンターで開かれた出版研究集会での講演で、講師を務めた江川紹子氏が、オリコン訴訟の地裁判決について言及しました。裁判所はジャーナリズムに対して、社会の空気を読んで判決を出している、社会のメディアへの不信感が背景にあると指摘していました。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 18:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリコン訴訟、高裁口頭弁論、9/16傍聴
高裁第一回口頭弁論後

音楽ヒットチャート作成で知られるオリコン株式会社が、雑誌「サイゾー」に掲載されたコメントが名誉毀損であるとして、ジャーナリスト・烏賀陽弘道に対して、5000万円の損害賠償などを求めて訴え、かつ烏賀陽側も反訴している裁判、いわゆるオリコン訴訟の控訴審の第一回口頭弁論が、東京高裁で開かれた(宗宮英俊裁判長)。<平成20年(ネ)2839>

傍聴席44席は、傍聴券配布時には余裕があったものの、開廷中に満席となった。法廷では、烏賀陽側が提出した控訴理由書を受け、オリコン側が反論の準備書面を出す期日や次回口頭弁論期日を決定し、終了した。閉廷後、司法記者会で会見が、弁護士会館で説明会がもたれた。

控訴審に向け、烏賀陽側の代理人に変化があり、飯田正剛弁護士を代表とする弁護団に交代した。烏賀陽側は地裁での敗訴後、早い段階で代理人の交代を決定。今回代理人となった飯田正剛、小川朗、日隅一雄の各弁護士は、報道被害の問題に積極的にとりくんでいる弁護士のネットワーク、報道被害救済弁護士ネットワーク・ランビック(LAMVIC=LAwyers netwark for “Media VICtims”damaged by news coverage)の会員で、メディアに関係した事案を数多く取り扱っている弁護士である。説明会で弁護士を交代させた理由を問われた烏賀陽は、「専門家に頼むことにした」と表現した。

説明会で烏賀陽側は、控訴審での主張のポイントとして、一審ではサイゾー誌上で記事が作成され活字になるまでの事実関係が詳しく審理されなかったとして、その点を明らかにして地裁判決の事実認定を否定すること、第二に、改めてこの事例は名誉毀損としての違法性が成立しないと主張したことを挙げた。

烏賀陽側は、控訴審で事実関係の詳細を明らかにするため、烏賀陽本人、「サイゾー」元副編集長、「サイゾー」編集長、小池亘オリコン社長、オリコン・チャート作成責任者、の5人を証人申請した。また、烏賀陽側は控訴理由書のなかで、SLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)の文言を用いて、この訴訟は(国際的な)比較法的に見ても、違法な提訴であることを主張した。

説明会で日隅一雄弁護士は、アメリカの名誉毀損訴訟では「公人・私人の二分論が確立している」と紹介し、訴訟上の争点が、公人に対する問題なのだという点をこの裁判を通して主張したい旨を述べた。アメリカ法の下での公人・私人論では、報道内容が公の議論であるか、対象者がその議論にどのように関与しているかを判断し、公人に対する批判は、原則的に自由でなければならないと考えられており、公人への名誉毀損はめったに成立しないと言われている(参考:『報道被害者と報道の自由』喜田村洋一著(白水社))。

今回烏賀陽弁護団は、不当な提訴をSLAPPの文言を用いて主張の根拠としたわけだが、飯田・日隅両弁護士ともに、これまで実務上、SLAPPの文言が裁判の準備書面などで用いられるのを目にしたことはないという。

ちなみに、津田大介氏がこちらのTwitterでつぶやいていたように、SLAPPは訴えられたことに対する対応だけで、経済的に困窮させられ肉体的に疲弊させられる点、逆に言えば、強者が訴えただけで弱者を窮地に追いやることができる点をどう見るかが、大きな論点である。どういうふうな試算になるかはわからないが、オリコン訴訟をめぐる経済的負担の実態を、烏賀陽はいずれ見える化する意向とのことだ。次回期日は、11月11日、11時から、東京高裁、820号法廷で開かれる。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 21:39 | comments(0) | trackbacks(2) |
オリコン訴訟控訴審初回期日は9月16日午前10時
『ジャーナリストが危ない』(花伝社)のもととなったシンポジウムを主催した出版労連は、オリコン訴訟地裁判決後の4月30日、「オリコン訴訟・東京地裁判決に関する声明」を発表して、地裁判決を批判していました。地裁判決が、記者の取材源の秘匿を認めようとしなかった点にまで言及して批判した声明になっています。

ところで、オリコン訴訟の控訴審初回口頭弁論は、9月16日(火曜日)午前10時。東京高裁8階、820号法廷にて開かれる予定です。傍聴券が出ると思われます。日付が近くなれば、またサイトをチェックしてみてください。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 16:09 | comments(0) | trackbacks(0) |
出版流通対策協議会がオリコン訴訟東京地裁判決に抗議声明
オリコン訴訟の東京地裁判決に対する抗議声明が出され始めました。まず入ってきたのは出版流通対策協議会(流対協)からのものです。

出版流通対策協議会がオリコン不当判決に抗議声明





| slapp | 日本のSLAPP実例 | 23:24 | comments(0) | trackbacks(1) |
オリコン訴訟東京地裁判決全文+サイゾー編集部コメント
オリコン訴訟東京地裁判決の全文が公開されています。文書が縦で読みやすいので、津田大介氏のサイトにリンクします。UGAYA Journal.でも読めます。

音楽配信メモ オリコン烏賀陽裁判の地裁判決文をアップしました

追記
判決を受けてのサイゾー編集部のコメントにもリンクします。
オリコン訴訟の判決についてのコメント : 日刊サイゾー
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 22:17 | comments(0) | trackbacks(2) |
オリコン訴訟地裁判決の報道から
マスメディアの記事から当ブログの気になる一部分だけをクリップします。類似の裁判が起きたとき、争点化しそうな部分を後日参照するためです。あくまで今回の地裁判決(綿引穣裁判長)の判断の記録です。記事全体はリンク先の確認を。

名誉毀損を訴える側が、記事の執筆者や出版社の責任は問わず、コメントの提供者のみを訴えた、という点に関連して。
烏賀陽氏敗訴 オリコン側の主張をほぼ認める - OhmyNews
反訴については、『サイゾー』の発行者や本件記事の編集者に対しては訴訟を提起せず、被告に対してのみ提訴したことについては、「全ての不法行為責任者に対して訴訟を提起する義務を負わない」として、違法と評価できない、とした。また、反論がある場合にはメディアで反論を求めるべきとしていたことには、「訴訟を提起しようとする者がそれに先立つ事前交渉を行う義務はない」「名誉毀損に対する対抗言論の手段を持つ者が訴訟提起の手段を自粛する義務を負うわけでもない」とした。

コメント者の責任は、いかなる場合に、いかなるプロセスを経て生じるかという点について。
オリコン批判記事でジャーナリストに賠償命令 - MSN産経ニュース
綿引裁判長は、一般論として「出版社の取材に応じた者はコメントがそのまま掲載されることを予測しておらず、取材に応じた者に責任はない」と指摘。一方で、コメントがそのまま掲載されることに同意、もしくは掲載される可能性が高いと認識していた場合は「コメント部分は提供した者に責任が生じる」とした。 その上で、烏賀陽さんのコメントが「編集者とメールなどで意見交換しており、そのまま掲載されることに同意していた」と認定。「コメントが真実であるとは認められない」と烏賀陽さんの責任を認めた。
雑誌にコメント「掲載同意なら個人に責任」東京地裁が賠償命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE
 雑誌の発行元ではなく、コメントした個人だけを名誉棄損に問うのが妥当かが争点となった。判決は「一般に、出版社はコメントの裏付け取材や編集を行って掲載するため、コメントした者が名誉棄損に問われることはない」とする一方、「そのまま掲載されることに同意していた場合は、例外的に責任が問われる」と述べた。その上で、烏賀陽さんが掲載に同意しており、内容も真実とは言えないとして、賠償を命じた。
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 01:42 | comments(0) | trackbacks(1) |
オリコン訴訟、東京地裁判決、烏賀陽側に100万円の賠償命じる
20070422 club

音楽のヒット・チャート作成で知られるオリコン株式会社が、雑誌『サイゾー』にコメントした内容が名誉毀損にあたるとしてジャーナリスト・烏賀陽弘道に、5000万円の損害賠償を求め、かつ烏賀陽側も反訴し、1100万円の損害賠償を求めていた裁判は、22日、東京地裁(綿引穣裁判長)で判決が下され、烏賀陽側に100万円の損害賠償が命じられました。烏賀陽側は控訴する方針です。

この日解放された傍聴席33席は抽選となり、開廷時にはテレビカメラの撮影もあり、間違いなく関心度の高い裁判でしたが、オリコン側の出廷はありませんでした。

綿引裁判長は、烏賀陽の「オリコンは予約枚数もカウントに入れている」といったコメントの真実性、真実相当性をいずれも否定、チャートに関する疑惑を「単なる風聞にすぎないことはいうまでもない」と、断じました。

判決は、弁護団が独自にオリコンの調査対象店を訪ねて行った調査は信用できない、ジャーナリスト・津田大介氏が複数音楽関係者に聞き取りを行って提出した陳述書も信用できない、本人がレコード関係者に行った取材結果も信用できないなどと、烏賀陽側が提出した数々の証拠について、証拠価値がないとしました。

裁判後、烏賀陽側代理人・釜井英法弁護士は、「(証拠の評価が)あまりに一方的。弁護士が調べたものを信用できないとは、偏見すら感じる」と判決の不当性を強調しました。

烏賀陽本人は、この判決を受けて、こうコメントしました。「この裁判は、烏賀陽vsオリコンというかたちをとっているが、言論の自由と民主主義をぶち壊そうという勢力との闘い。恫喝訴訟をしたほうがトクだという暗黒時代の幕開けにしてはいけないと思う。この判決を認めると、書いた人間の文責は問われず、取材源だけが狙われる。取材して報道するということが成立しなくなる。」

さらに「取材先」「情報源」だけを狙い撃ちした提訴は、供述調書を漏洩したとして医師が刑事責任に問われている『ぼくはパパを殺すことに決めた』事件と同じ構造でもある、とあらためて訴訟の特異性を指摘しました。

追記:オリコンによるプレスリリースが出ていました。
訴訟の判決に関するお知らせ
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 18:21 | comments(4) | trackbacks(1) |
広田研二vs帝京大学
対象を狙い撃ちした例としては、ジャーナリストの広田研二氏を帝京大学が訴えた裁判がありました。2002年、広田氏が雑誌「サンデー毎日」で、帝京大学が要件を満たさない学生に単位を乱発し卒業させていたとする記事を書いたところ、同年5月、帝京大学は記事内容は虚偽であるとして名誉毀損を理由に、広田氏に2200万円の損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こしました。問題となったのは「サンデー毎日」2002年4月28日号の記事。この裁判では、当初帝京大学は、記事に関する「通知書」を広田氏と「サンデー毎日」の両者に送付。しかし実際の提訴は、広田氏だけを対象に起こされたそうです。2004年9月、東京地裁は真実相当性を認めて請求を棄却、広田氏が勝訴しています。

◇参考
週刊金曜日 第559号 2005年06月03日
フリーライター座談会 「不当提訴は言論弾圧だ」 (広田研二・三宅勝久・横田一)
毎日新聞社 「サンデー毎日」2004年9月19日号
「帝京大学」との「法廷闘争記」 ジャーナリスト・広田研二
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 12:43 | comments(0) | trackbacks(1) |
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