SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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非当事者のオリコン訴訟雑感(4)
配られたレジュメの最後には洋書『SLAPP』の中から、SLAPPの要件が訳されていました。が、どう見てもオリコン訴訟を特別視する必然性のない定義群です。裁判を契機に新しい法律の概念に目覚めるのはよいのですが、烏賀陽さんが個人的なプレステージ(威信)のためにSLAPPという概念を使おうとしているのだとしたら、いろんな意味で不幸なことだと思ってしまいました。過去に国内で刊行された本を辿ってみても、SLAPPという概念は、オリコン訴訟以前に実務家の間で知られていたし、訴権の濫用に関しては、判例の中には、裁判の途中で審理を停止するという発想(まさに米におけるアンチ・スラップの動議に相当)まで示されたことがあるのです。そうした過去の国内の蓄積をふまえないで専売特許のように語られていいものか…。

 

イベントで烏賀陽さんは、SLAPPの概念を造った米国の大学教授にも現地取材したいと宣言していたので、「日本初のSLAPP訴訟に「勝訴」したジャーナリスト」と自己定義して取材に行くのかなと思うと、もやもやした思いがしました。以上、ある意味、「被害者」烏賀陽さんに苦言を呈するエントリーを書きました。でもこれを書かないと、私自身も苦しくて苦しくて仕方がないので書きました。偏りなき視点で示唆するところを学び取らないと、それこそ概念の創始者にも失礼です。

 

管理人はもともと言論の自由だとかメディア論だとかのテーマが好きな性質なのですが、このところ、そうしたことを全く考えられなくなっていました。もともとオリコン訴訟が起きた後、武富士訴訟などかねてから関心のあった訴訟についての議論を参考に、SLAPPという概念に着目し、これは意義があると当ブログを始めました。が、遠慮というか自己規制というか、次第しだいに自由に考察することが、できなくなりました。サイトを開くことさえできませんでした。烏賀陽さんの「勝訴」宣言に疑問を投げかける知り合いもいないようです。でも、自分の言語感覚に忠実に思考しない限り、前へ進めません。

 

昨年、SLAPPの切り口でオリコン訴訟をとりあげた大手メディアとしては、週刊朝日、毎日新聞がありました。いずれの記事を書いた記者も、メディア関係の記事を書く記者として著名な人たちです。影響力あるメディアの記者たちと問題意識を共有できたことは喜ばしいことではありました。それらの記事を書いた二人とは、沖縄密約情報公開請求訴訟の現場で居合わすことがありますが、その訴訟の原告団の会議に、たまたまですが、管理人は彼らと三人だけ、ずうずうしくも非当事者なのに同席させてもらったことがあります。その場には、あの西山太吉氏もいたのですが、西山氏がその会議で口にした最初の話題は、訴訟を提起するにあたって会見を開こうとしたら外務省記者クラブに拒否されたという話題でした。またその訴訟の第一回口頭弁論後に開かれた集会でも彼らと同席していましたが、その集会では議論めいたやりとりがあって、毎日新聞OBの男性が毎日新聞の部数が西山事件をきっかけに減ったと巷間言われているけれども、あれは押し紙を減らしたからなんだ、自分はそれを公言してはばからないという発言がありました。

 

何が言いたいのかというと、言論・表現の自由をめぐる先鋭的な記事を書いている記者たちであっても、大手メディアの記者たちは、書けない、いや書かない事実というのが存在していて、そうした仔細なエピソードの部分に、案外真に知られるべき事実というのはあるし、そういうものを共有する努力を個人的にはしてみたいってことです。読売新聞による黒薮哲哉氏に対する訴訟など、その典型で、先の二人の記者たちも言論の自由の問題として記事化することはないでしょう。話はずいぶん飛んでしまいましたが、言論の自由について考えましょうという原点を大事にして、タブー視や自己規制を排さなければいけないな、と。たとえそれがこのブログのきっかけになったオリコン訴訟に関してもということです。そんなことをず〜〜っと考えていました。(了)

| slapp | 当ブログから | 23:19 | comments(0) | trackbacks(2) |
非当事者のオリコン訴訟雑感(3)

控訴審以降、裁判は非公開で進展するようになり、ずいぶん時間が経ってからですが、ある所で烏賀陽さんと直接顔を合わした際に、なぜ非公開で裁判を進めているのですか?と聞いたことがありました。そのときの答えは、「裁判所が公開の法廷を開いてくれないから」というものでした。そんなことあるのかと思い、その理由は?と聞くと、「わからない」と返ってきました。正直言って、私はその説明に納得ができませんでした。非公開での和解の協議を公開法廷よりも「選択」していたから、非公開で推移したのではないでしょうか。

 

その後昨年8月、和解が成立し、「勝訴」との表明が烏賀陽さんから、なされました。彼からはオリコンが非難されていましたが、内容は、サイゾーが両当事者に謝罪し、烏賀陽さんに賠償金を払うものでした(和解調書参照)。いくら当事者でも、そんなレトリック(言葉選び)でアナウンスしていいのだろうかというのが第一の印象でした。その後、出版労連や出版流通対策協議会が、烏賀陽さんの主張を受け売りした見解を発表しました。そうした団体に対しても、編集の不正確さが紛争の原因と認定する内容なのに、業界の教訓とせず、オリコンばかり非難していることに、気分が萎えました。結局、違和感を抱いているのは自分だけかとも悶々としました。

 

和解から2ヵ月近く経った9月26日、新宿「NAKED LOFT」にてオリコン訴訟について和解後はじめて語られるというふれこみで、津田大介氏による烏賀陽弘道公開インタビューというイベントが開催されました。けじめとして聞きに行き、印象に残った点が二点ありました。ひとつは津田氏が、オリコン訴訟についての話題は当初ネットで盛り上がっていたのに、終結したときにはほとんど盛り上がらなかったことを指摘し、ネット(上の言論)は熱しやすく冷めやすいところがあるのがどうしたものか、と漏らした点でした。嘆くようなトーンでしたが、烏賀陽さんに気を使った切り口だなとも感じました。でも、そもそもネット上で論者が何か考察しようにも、和解に至るプロセスについて情報が少なすぎ、肯定的にせよ否定的にせよ、盛り上がりようがなかったのが実情ではないでしょうか。プロセスの情報を出さないで結論だけを聞いて欲しいという情報発信は、ネットの空気感に最もそぐわないもので、関心を持たれなかったのは当然だと思いました。

 

印象に残ったもう一点は、そのイベント用に烏賀陽さんが作ってきたレジュメの中の文言でした。『オリコン裁判の経緯』、『オリコン敗訴宣言。烏賀陽側の逆転勝訴で終結』、『オリコン裁判の問題点まとめ』と3章ほどに分かれたレジュメの最終章の最初の大見出しには、「オリコン訴訟は日本で初めての「SLAPP訴訟」である。」と太字で書かれていました。この文言を目にして、私はイベント中、烏賀陽さんの話をまともに聞けなくなってしまいました。なんだコレ?という思いが脳裏を駆け巡りました。当ブログに関心をもつ読者で、この文言に同意できる人が何人いるでしょうか。いくら自分の体験が特異だからといって、そんなことが書けるとは、どういうことなのか。「日本で初めての○○」。新聞記者が好きそうな修飾語だと思いました。

 

烏賀陽さん自身は‟日本で初めてを根拠づける自説を持っているのかもしれません。しかし訴訟による口封じというSLAPPの概念の核心が当てはまる事例は、あまり深く考えなくても、武富士やクリスタルによるものなど、先行事例はごく自然に思い浮かぶのであり、しかも判決で提訴の違法性の認定まで勝ちとっている被告経験者もいるのです。一審では多くのジャーナリストが傍聴に足を運んでいましたが、そうした裁判で被告を経験した当事者も数多くいました。そうした人たちの経験はSLAPPと考察するに値しないのか。国内の法律専門誌でも批判的言論威嚇目的での訴訟と題した項目の判例解説は、過去に存在しているのです。((4)へ) 

| slapp | 当ブログから | 22:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
非当事者のオリコン訴訟雑感(2)
 逐次ブログで情報をお知らせするため会って裁判の経過を聞き出すところまでできなかったのは、同情を寄せている烏賀陽さんに対して、いちいち疑問を突きつけるのに抵抗感があったのと、烏賀陽さん自身が語り出すのを待ってしまったことがあります。そもそも訴訟とは、民事訴訟であっても公開が原則ですから、控訴審以降、非公開のまま裁判が推移するとは、全く想定外でした。しかもオリコン訴訟は、ジャーナリストが当事者でしたし、多くの人に注目と支援を呼びかけていたので、プロセスを開示しつつ進行するのが当然だと思っていました。また管理人は烏賀陽さんより後輩であり、目上の人に遠慮してしまったというのもあります。

 

加えて直接質問に二の足を踏ませる一因としてあったのは、訴訟になって以降、烏賀陽さんは時折、話し手として訴訟について語る集まりをもっていましたが、そうした集まりをもつ際、しばしば「オリコン訴訟をめぐって、まだ公にしていないことがあるので話すかもしれません」といった惹句で人を集めていたことが気にかかっていました。

 

訴えられて以降、烏賀陽さんは、裁判に関する文章を書いたり、Youtubeにビデオをアップしたり、会見を開いたり、個別取材を受けたり、いろいろ情報を発信していたとは思いますが、実はまだ公にしていないことがありますとか、公にしていない裁判の経過をしゃべるかもなど、しばしば情報を小出しにしているのが見受けられました。裁判に対処するだけでも大変な環境であったと重々承知していますが、個人的にはその姿勢に、違和感がつのっていました。話を聞いて欲しいとSOSを発しながら、でも詳細な事実関係は公にしているわけではありませんと言わんばかりの人の話に耳を傾け続けるのは、容易なことではありません。

 

同情すべき境遇の「被害者」とはいえ、このブログとしても彼が小出しに出す情報をその都度紹介するだけなら、偏ったポジショントークに組みしてしまうだけになる可能性があります。価値があるようなないような情報をほのめかすあり方を目にすると、いくら訴訟に興味をもった者でも、まともな非当事者ならコミットに慎重になってしまいます。訴訟が進展するにつれ、メディア関係者がオリコン訴訟を積極的にとりあげないのも無理ないかもと感じてしまった面がありました。

 

当ブログはSLAPPという日本ではあまり知られていない現象を研究する場としてスタートしたため、オリコン訴訟についても、事実関係ぐらいは客観的に情報を提供したいと思っていて、烏賀陽さんの、情報をチラ見せでもよしとするかのような姿勢を見るにつけ、訴訟をどのように扱ったらいいのか、時が経つごとにわからなくなっていきました。

 

特に一審で敗訴して以降まもなく、一審を担当した弁護士の解任やサイゾーの訴訟への関与を仄聞していたのですが、烏賀陽さん自身がそれら裁判上重要と思われる経過を積極的に語ろうとしなかったため、方向感を失ってしまいました。オリコン訴訟だけを特別視して、スルーして語らなくなってしまうなら、このブログは信頼性を失ってしまいます。他の興味深い訴訟についても、現在進行形で言及していくのが不自然なように感じていきました。とは言え、停滞の最大の原因は、管理人自身が明確な運営方針をもっていなかったことが原因だと自覚しています。((3)へ)
| slapp | 当ブログから | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
非当事者のオリコン訴訟雑感(1)
反竹デモ2003

年が変わったのを契機に、溜まっていたものを吐き出します。以下、長文エントリーご注意を。冒頭写真は2003年、管理人撮影。

 

この文章を読もうという方なら、ご存知のとおり、当ブログを始めるきっかけとなった、オリコンvs烏賀陽裁判は、昨年8月3日に控訴審での和解が成立し、終結しました。和解内容については、烏賀陽さんのサイトにその内容が掲載されています(和解調書)。烏賀陽さんは自ら解説して「勝訴」だと表現しています。そしてのちに経過を語る文章もアップしています。()(

 

ひとこと感想を語る前に、管理人は、烏賀陽さんの被った事態には同情しています(だからこそ、このブログを運営していました)。次にそれを前提として、和解への見解を述べると、結果としてオリコンによる訴えそのものは筋違いであったことが確定したと言えますし、烏賀陽さんは裁判を撥ねつけたうえ、非を認めた者(サイゾー)から500万円の賠償金を得ており、一個人としては勝利を得たと表現できると思います。しかし、対オリコンにおいて「勝訴」したと社会的に強調するのは無理がある、というのが率直な感想です。

 

特に当ブログが問題意識をもっていたオリコン提訴の恫喝的側面に関しては、とりあえずその論点を不問にすることで、裁判は終結したのだと解釈しています。和解成立時に記事にしたメディアがいくつかありましたが、「オリコン損賠訴訟:和解が成立「編集不正確」、サイゾー謝罪 」という毎日新聞の記事の見出しが、最も的確に事態を伝えていると思いました。

 

結果的にこの裁判を通しての「敗者」とは、控訴審から利害関係人として裁判に参加し、非があったことを自ら認め謝罪に至ったサイゾーであったのだと見ています。烏賀陽さんは裁判後、請求の放棄と訴訟の取り下げは違う、とテクニカルなことを強調していますが(確かに用語として別物なのですが)、その実際の効果については、訴訟当事者による自主的紛争解決の方式として、その共通性・類似性を認めるのが学説上も有力な傾向だと私は理解しています。原告による請求放棄とは訴えの根拠がなくなったということだから、それはつまり被告の勝訴に値する、という一般的な方程式は、サイゾーが関係者として加わったオリコン訴訟控訴審では、いっそう当てはまらないと思います。オリコンは誤りを認め謝罪する主体が現れたことで請求を放棄していて、当初の主張どおりの対応をしたとも言えます。

正直に告白すると、こんなブログを運営していたのに、控訴審以降、裁判がどういう経過を経ていたのか、あまり把握できていませんでした。烏賀陽さんは訴訟になって以降、知人を対象に「オリコン訴訟だより」という同送メールをときおり送信していましたが、そこでも控訴審以降は、ほとんど裁判の進行状況は語られず、関係者の多くはやきもきしながら事態を見守っていたのではないかと思います。

 

烏賀陽さんは当初から訴訟に関して、対面直接取材しか認めない、電話での質問には一切答えない、と当管理人に対しても宣言していたので、何か知りたいことがあってもカジュアルに質問するといったことは、できませんでした。このサイトは連名で始めたのですが、もとより知人レベルの関係でありましたので、突っ込んで経過を教えてもらう関係とまではいきませんでした。ただ、和解までには随分長い時間が経過したわけで、知りたいと思っていることを聞き出すことなく、時間だけが過ぎてしまったのは認めざるをえません。((2)へ)

| slapp | 当ブログから | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0) |
地裁判決を受けてのコメント
*22日の地裁判決直後に烏賀陽弘道が知人らにあてて送ったメールです。

みなさん オリコン裁判について残念なご報告をしなければなりません。

東京地裁(綿引穰裁判長)は22日、私烏賀陽に対してオリコンに100万円の損害賠償金を払えという判決を下しました。

判決内容を吟味すると、これは恐るべき判決だと慄然とします。

烏賀陽が証拠として提出した取材ノート、烏賀陽本人の法廷での証言はおろか、オリコンの数字が操作可能であり、その工作が日常化していたことを証言した元ソニーミュージック社長の丸山茂雄氏の証言や、ジャーナリスト津田大介氏の証言、あげくの果てにオリコンの調査対象店を抜き打ちで烏賀陽弁護団が調査した内容まで「信用できない」と、烏賀陽側の証拠にほぼ全否定に近い判断を下しました。

もし記者の取材オートや、記者本人の法廷での証言が信用できないなら、記者は何を持って訴訟に対応する「証拠」とすればよいのでしょう?

「オリコンの数字は有る程度操作できる」と烏賀陽の取材に話した人間は5人います。5重に裏が取れれば、それは通常の取材では真実と判断するに十分と判断するのではないでしょうか。が、法廷ではどれも「取材対象者は取材源の秘匿で明かせない」ことを理由に烏賀陽に不利な判断をしました。この判断は報道のあり方を根本から破壊してしまいます。

また、こうして烏賀陽に不本意な形で掲載され、掲載を断った内容にまで取材源(烏賀陽)が責任を負わされるのでは、誰が取材に協力などするでしょうか?これではマスメディアの「取材」という行為そのものが成立しなくなります。

また掲載誌「サイゾー」の出版社や編集部を訴えず、取材協力者だけを狙い撃ちする手口は、「ぼくはパパを殺すことに決めた」事件と同じ構図です。刑事だけでなく、もっと敷居の低い民事訴訟でこうした取材協力者つぶしが認められるなら、報道など成り立ちません。

さらに、オリコン本人が「この裁判の目的は烏賀陽が報道した事実を隠蔽し、事実ではないと認めさせ、謝罪させることだ」と公言しています。これが恫喝でなくてなんでしょう?訴訟の目的外の濫用でなくてなんでしょう?

不条理極まる判決と言わざるをえません。これでは、言論の自由と民主主義を守ろうと烏賀陽を応援してくれた全ての人に対する冒涜ではないでしょうか。

今回の裁判はたまたま「烏賀陽vsオリコン」という形になりましたが、この訴訟の本質は「民主主義を守ろうとする人VS裁判制度の悪用で民主主義を破壊しようとする勢力」の争いなのです。

私は裁判所は「民主主義を守る砦」であると信じます。というわけで、まだしばらくこの争いを続けることになりそうです。

引き続きよろしくお願いします。

烏賀陽

*最後にカンパを募っているサイトをお知らせします。お志ありますれば、お願いいたします。
http://d.hatena.ne.jp/oricon-ugaya/20070120/1169269747
| slapp | 当ブログから | 08:07 | comments(0) | trackbacks(2) |
SLAPPを撃つには周辺事例も洗わねば (つぶやき)
当ブログはオリコン訴訟を契機としてスタートしたブログなので、趣旨を拡散させないために、一般的な名誉毀損訴訟や、ひろく、言論・表現の自由について考える場とは、していません。SLAPPというキーワードを通して、言論封じ込めを目的としているのではと疑われる裁判の情報を中心にアップしています。

しかし1年近く続けてきて、言論を封じ込める訴訟は、名誉毀損の切り口だけではないこと、高額の賠償請求をしなくても、言論の萎縮効果を狙う手段は、多様に存在することなどが、わかってきました。第三者が見て表現者に対し圧力が加えられているのが明白な場面だけでなく、表現者自体が表現を自己規制する局面にも重大な問題が潜んでいることも、ほの見えてきました。SLAPPをより深く考えるには、単にSLAPPと疑われる裁判例だけでなく、それと近しい争点をもつ、言論・表現の自由をめぐって起きている裁判や現象からも、汲むべき論点があるはずです。

過去に、あの出来事はフォローしなくていいのか、などと考えをめぐらすことが、ちょこちょこありました。当ブログで扱ってきた裁判例は、一方が企業、一方が個人の表現者といった構図が前面に出る例が多く、それらは個人に過大な負担がかかることから、確かに問題なのですが、企業vs企業の間でも、看過できない裁判が起きていることがあります。また、表現者が訴えられていても、発表の場となった媒体(出版社など)ともども被告になるかどうかは決して一律でなく、媒体が表現者を支援するかどうかの対応も、その度合いも、事例ごとに、さまざまです。企業vs企業の裁判でも、互いの企業規模や、一方がメディア企業か、双方がメディア企業か、といった違いによって、問題は異なってきます。

これまで、カテゴリー「注目すべき裁判例」では、強者vs弱者の構図が比較的類推しやすい事例や、政治家vsメディア報道の事例を主に収集してきました。今後は、どちらが強者とも言いがたい、企業vsメディア報道が裁判になった事例や、ネット上の表現に対して起こされた裁判の例なども、興味深い出来事として、とりあげていこうかと思います。

というのも、言論・表現の自由に重大な問題を投げかけている多発する名誉毀損訴訟は、総表現者時代の到来によって必然的に引き起こされている面があり、しかも弁護士ビジネスの興隆という観点からも考察すべきもので、単純に、強者vs弱者のSLAPP的構図をもつ裁判に着目するだけでは、今という時代を考えるには不十分だと考えるに至ったからです。弁護士のなかには、世間的な強者にも弱者にも、どちらの弁護にもつく人物がいます。そういった人々が、どのように自己の職業倫理を正当化しているのかはわかりませんが、そういった人々の足跡の整合性を推し量るためにも、周辺事例を収集しておく意味はあるように思います。新カテゴリーを設けるかは未定です。
| slapp | 当ブログから | 08:37 | comments(0) | trackbacks(1) |
出版の自由が危ない連続セミナーのお知らせ
小零細出版社が集まった業界団体に、出版流通対策協議会(流対協)という団体があります。(ウェブサイトはコチラ)サイトのトップページによると、小出版社が再販売価格維持制度や差別取引の撤廃を求めて結成した団体とのことです。差別取引とは、書籍取次店による大出版社に有利な差別的取引慣行のことですね。流対協は昨年3月に出版57社の社長が連名でオリコン訴訟に対する注視をよびかけたときのネットワークとある程度重なっています。この団体が、出版の自由をめぐって、声明を発表したり勉強会を行ったりしていますが、今年最初の勉強会のテーマに高額名誉毀損訴訟を取り上げることになりました。会員社である緑風出版、彩流社の出版物が訴えられた例を参考としたセミナーが1月23日に開催されます。緑風出版が訴えられた件については、団体として、2006年12月に、裁判却下を求める声明を出していたものが、サイトで読めます。以下、詳細な案内です。

●出版の自由が危ない 連続セミナー

最近、社会的なテーマを扱う出版が名誉毀損で訴えられるケースが続発しています。しかも、名誉毀損の損害賠償額が高額化の傾向にあります。そういう事態はいまや他人事ではありません。 弱小出版社にとって、損害賠償の高額訴訟は経済的にも精神的にも大きな負担になります。実際に名誉毀損の裁判を闘った弁護士と当該出版社の経験を聞いて、今後予測される訴訟の頻繁化と異常事態にどう備えたらいいか、また、それに伴う言論・出版の自由の危機について考えます。

●日時/1月23日(水)18時30分から
●場所/文京区民センター 2F・2B会議室
●講師/
樋渡 俊一弁護士(御殿場RDF名誉毀損裁判※弁護人)
高須 次郎氏(御殿場RDF名誉毀損裁判被告/緑風出版)
竹内 淳夫氏(『ルーシー事件―闇を食う人びと』出版差し止め、名誉毀損事件被告/彩流社)

※御殿場RDF名誉毀損裁判
元御殿場市長が緑風出版発行の『崩壊したごみリサイクル』で名誉毀損されたとして訴えた裁判

●参加費/500円(会員外1,000円)
| slapp | 当ブログから | 13:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
「恫喝訴訟で口封じ?!」シンポは11月29日開催です
告知のリマインダーです。出版社などメディア関係者の方はじめSLAPPのテーマに関心をお持ちの方、何か管理人らがお手伝いできることがありましたら、会場にてお声がけくださいませ。

「言論の自由を考える11・29シンポジウム 〜 恫喝訴訟で口封じ?!」

とき 11月29日午後6時30分〜8時30分
ところ 豊島区立舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」
(JR池袋駅東口歩8分、豊島区東池袋4−5−2ライズアリーナビル、03-5391-0751)地図→http://www.mapion.co.jp/c/here?S=all&F=mapi3211834071103001558

お話 
 田島泰彦・上智大学教授
パネルディスカッション
 烏賀陽弘道(ジャーナリスト)
 釜井英法さん(弁護士)
 西岡研介さん(ジャーナリスト)
 山田厚史さん(ジャーナリスト)

チラシへのリンクはこちら(出版労連)
http://www.syuppan.net/uploads/smartsection/37_11_29genron.pdf

会場カンパ(資料代) 500円
主催 日本マスコミ文化情報労組会議/日本出版労働組合連合会主催
問い合わせ:出版労連(03−3816−2911)
| slapp | 当ブログから | 16:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
「紙の爆弾」12月号に記事掲載
紙の爆弾200712
現在発売中の雑誌「紙の爆弾」12月号(鹿砦社)が先月に続いてSLAPPに関連する記事を扱っています。オリコン訴訟の経過を追った橋本玉泉氏の記事と、キヤノン訴訟を中心に最近の恫喝的訴訟の諸事情を追った当ブログ管理人(執筆:岡智)による記事が掲載されています。

オリコン訴訟の記事は、前回裁判期日であきらかになった烏賀陽側弁護団によるオリコンチャート集計法の小売店直撃調査の内容を追っています。キヤノン訴訟の記事は、サンプロコメント訴訟の件もあわせて書いています。それならブログと同じ内容じゃないかと思われるかもしれませんが、今回の記事を書くにあたって今まで以上に事例を集めることに努め、日本経団連会長の御手洗毅氏同様、経済界の大物による他の裁判例や、名誉毀損ではなく著作権侵害による訴えでメディアに圧力を加える経営者の例などにも言及しています。

書店にてお手にとってぜひご高覧くださいませ。鹿砦社は、ブログでの発信(Webzine紙爆)の更新頻度があがってますね。当ブログもリンクで紹介されていました。では、以下が12月号の関連記事の目次です。

特集 “権力”による「言論の自由」への“恫喝”を許すな!
◆オリコン恫喝訴訟のゆくえ 被告・烏賀陽弘道氏が「有力証拠」を裁判所に提出
◆キヤノン・御手洗冨士夫会長に“財界総理”の矜持はあるか??斎藤貴男執筆『週刊現代』記事に対し、二億円の損害賠償を求め提訴

追記:鹿砦社のブログで続々更新されているのは、(デジタル紙の爆弾・紙爆ニュース)の方でした。細木数子vs溝口敦・講談社裁判の件も掲載されています。
| slapp | 当ブログから | 22:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
11月29日、言論封じの訴訟を考えるシンポジウム開催
11月29日に、SLAPPについて考える(そういう題名ではありませんが)シンポジウムが開催されます。現在進行形で訴えられているジャーナリストを主なパネリストに、恫喝的訴訟、言論封じの訴訟について考える企画です。SLAPP被害者のジャーナリストが集まって危機意識を共有しようというディスカッションの集まりです。登壇予定は田島泰彦、烏賀陽弘道、釜井英法、山田厚史、西岡研介の各氏です。各氏が一堂に会することは稀です。ぜひおいでください。

「言論の自由を考える11・29シンポジウム 〜 恫喝訴訟で口封じ?!

とき 11月29日午後6時30分〜8時30分
ところ 豊島区立舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」
(JR池袋駅東口歩8分、豊島区東池袋4−5−2ライズアリーナビル、03-5391-0751)地図→http://www.mapion.co.jp/c/here?S=all&F=mapi3211834071103001558

●第一部 現状分析「ジャーナリズムの再生のために」 
田島泰彦さん
上智大学新聞学科教授。憲法・メディア法専攻。毎日新聞「開かれた新聞」委員会委員も兼務。メディア規制問題などで積極的に発言。著書に『人権か表現の自由か』(日本評論社)、『この国に言論の自由はあるのか』(岩波ブックレット)ほか。

●第二部 パネルディスカッション 西岡研介さん(ジャーナリスト)+山田厚史さん(ジャーナリスト)+釜井英法さん(弁護士)+烏賀陽弘道(ジャーナリスト)

*西岡研介さん
ジャーナリスト。著書に『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)ほか。「週刊現代」にJR東日本の実態をえぐる連載をしたところ、JR東労組やその組合員から40件以上の名誉毀損訴訟を起こされる。
*山田厚史さん
ジャーナリスト。著書に『日本経済診断』(岩波ブックレット)ほか。日興コーディア
ル証券が上場廃止にならなかった背景について「サンデープロジェクト」(テレビ朝日系)に出演しコメントしたところ、安倍前首相の秘書から訴えられる。
*釜井英法さん 
弁護士。獨協大学法科大学院客員教授。消費者事件や環境・公害問題に強い。共著に『多重債務被害救済の実務』(勁草書房)ほか。武富士事件では「裁判による言論弾圧」を断罪する判決をとり、オリコン訴訟では烏賀陽の弁護団長。
*烏賀陽弘道
ジャーナリスト。著書に『Jポップの心象風景』(文春新書)ほか。月刊誌「サイゾー」の取材に答えたオリコン・ヒットチャートについてのコメントを理由に、オリコンから「5000万円払え」と訴えられる。

チラシへのリンクはこちら(出版労連)
http://www.syuppan.net/uploads/smartsection/37_11_29genron.pdf

会場カンパ(資料代) 500円
主催 日本マスコミ文化情報労組会議/日本出版労働組合連合会主催
問い合わせ:出版労連(03−3816−2911)

マスメディア関係者、ブロガーの方はどうぞ取材・報道してください。リンク・転載歓迎です。また直前にも告知します。
| slapp | 当ブログから | 21:33 | comments(0) | trackbacks(2) |
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