SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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スラップ訴訟情報センター
 独自のドメインで、スラップ訴訟情報センターというサイトができています。サイドバーのリンクにひと月ほど前から付加していました。日本版SLAPPまとめサイトといったところでしょうか。アメリカでは、SLAPPの概念を考えた学者らが参加して、SLAPP Resource Center というまとめサイトが2006年につくられていました。そのサイトのおもむきに似ています。SLAPP Resource Centerは告発や相談に応じるフォームを設けるなど、非常に充実したサイトでした。ただし事情はわかりませんが、現在、ドメインは消失しています(サイドバーにリンクの痕跡を残しています)。どんな問題でもそうですが、被害を訴える声を、ある程度自立性をもってフォローし続けるのは、なかなか難しい作業です。でもアメリカには実定法まであるのですから、日本でもSLAPPについて考え続ける場は必要ですね。

スラップ訴訟情報センター
http://slapp.jp/
| slapp | 未分類 | 08:07 | comments(0) | trackbacks(1) |
メディアはメッセージである
ヤフー・トピックス20090329

伝統的メディアの人間が、いかに見たくないものから目を逸らそうとも、心ある人は見ています。MONEYzineの中の人、ヤフー・ニュースの中の人、その心意気、勝手に感じとらせていただきました。明日は、読売vs偽装部数調査報道記者訴訟の、著作権にまつわる裁判の地裁判決の日です。

■判決
日時:3月30日(月) 13:30〜
法廷:東京地裁627号(地下鉄霞ヶ関駅A1出口すぐ)
■判決報告集会
日時:3月30日(月) 18:30〜20:30
会場:出版労連本部会議室文京区本郷4−37−18 いろは本郷ビル2F
(丸ノ内線・大江戸線本郷三丁目駅3番出口)
共催:出版労連・出版産業対策部・出版ネッツ
MAP http://www.syuppan.net/uploads/img463358ee1c553.gif

◇参考…画像は29日、ヤフー・トピックスのキャプチャ
新聞業界の苦悩 自らの首を絞める「押し紙」問題:株/FX・投資と経済がよくわかるMONEYzine
マスコミ、出版 - Yahoo!ニュース
読売新聞押し紙訴訟、30日に判決
| slapp | 未分類 | 21:14 | comments(0) | trackbacks(0) |
MyNewsJapan選定「日本鬼畜訴訟大賞」
周回遅れ備忘録の更新です(遅くてもたんたんと記録するよ)。ジャーナリスト・渡邉正裕氏主宰のニュースサイト「MyNewsJapan」が、昨年12月に2008年中に提訴された裁判を対象に、“嫌がらせ口封じ”訴訟としての性質がみられる訴訟をリストアップ、ジャーナリスト5人の投票によって悪質さをランキングし、第一回鬼畜訴訟大賞として発表していました。

1位に読売新聞西部本社、
2位に新銀行東京、
3位に毎日新聞社、が選ばれています。

前二者の訴訟は当ブログでも情報をフォローしていましたが、毎日新聞社による訴訟とは、対販売店との間での訴訟を指すとのことです。

MyNewsJapan:第一回「日本鬼畜訴訟大賞」最極悪賞に読売新聞社


| slapp | 未分類 | 07:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
新聞という腐海
読売新聞絡みの訴訟に言及したため、かつてなく読売新聞からのアクセスが増加しています。正直に言って今後、読売新聞の法務関係者が何をしてくるかわからないという思いがありますので、細心の注意を払うため、ブログのトップページにあるブログの主旨説明の中の「恫喝訴訟」の文言を「恫喝的訴訟」に変更しました。管理人独自の言語感覚に過ぎないかもしれませんが、現在進行形の紛争についても言及することのある当ブログとしては、ブログの短い主旨説明文にせよ、恫喝訴訟という断定的価値判断を含んだ形容を避け、恫喝的訴訟という問題意識の反映にとどめる表現にしたいと思いました。“的”があることで、記事を読む第三者にも当該訴訟の評価をめぐって価値判断の余地を残す積極的な意味があります。過去エントリーの中身では意識的に恫喝的訴訟と表現しているのですが、トップページには字数の関係から恫喝訴訟の表現が残っていて、気になっていました。形容の揚げ足をとられて訴訟を起こされ、SLAPPについて考える機会を奪われたりしたら、当ブログとしては本も子もありません。当ブログは研究室兼資料室です。

さてさて、過去にも読売新聞絡みの訴訟に言及したことで、当ブログの閲覧者には新聞販売店の関係者もいらしていると思いますが、たぶん当ブログは新聞販売店の方に読んで共感してもらえるようなエントリーを書くことは難しいです。たとえ販売店が新聞本社に従属的な地位にあったとしても、偽装部数を長年積み重ねているような販売店の場合、それは偽装の“共犯者”としての評価を免れえないとも考えます。

新聞のビジネスモデルが破綻しかけている今、不況もあいまって新聞本社による専属販売店への締め付けはかつてなく厳しくなっていると想像します。当ブログとして、ただ言えることは、そうした時代に新聞本社が発する「ともにこの難局をのりきろう」といった共存共栄を謳う甘言は、そう遠くない未来に、本社側が手のひら返しで、紙の新聞の時代は終わったとの死亡宣告に変わると予測しているということだけです。いま新聞本社は、紙なき時代の事業の存続に向けて、出来る限り内部留保を確保していこうと刹那的に販売店を利用しているのが実際ではないでしょうか。環境への配慮が求められているこんにち、時間遅れの情報を運ぶためだけに森林伐採を毎日毎日、物理的にやり続けるようなビジネスが、持続的であるとは思えません。偽装部数の事実を公表し、まっとうなビジネスをやりたいと声をあげている販売店の方には、同情するほかありません。販売店の経営は、新聞事業にのみ従属しない一物流業者として自己を再定義すれば、今後も事業存続の余地が広がるのではないでしょうか。

閑話休題。昨年、東京大学情報学環と読売新聞の共催で3回連続のシンポジウムが開かれ、12月13日には、「『新聞』という船」というメディアとしての新聞を検証する回がもたれました。このときのシンポジウムでは読売新聞東京本社会長の滝鼻卓雄氏が基調講演を行い、市民ジャーナリズムの台頭を否定的に評価する独自のジャーナリズム論を展開しました。(参考リンク)講演のなかで滝鼻氏は、販売店のことにふれ、戸別配達のインフラを変わらないようにしたいと述べました。そのとき新聞販売店と郵便局の規模を比較しながら話をすすめたのですが、それが以下のような対比でした。昨年時点の数字だと思われます。

販売店      2万424店   販売店従業員数 42万4778人
民営化後郵便局 約2万400局  民営化後郵便局従業員数 約11万9900人

上記の数字を見ると、郵便局も人材をアウトソースしているでしょうし、物流一般には他の業者も存在しますから、この比較にどれほど意味があるのかわかりませんが、公的に競争から守られた単一の商品を扱う販売店が、これほどの規模で存在しているのかと業界の過剰人員体質に驚きました。講演で滝鼻氏は日米の新聞の収入構造の違いを強調して日本の新聞の磐石さを誇っていましたが、もう一人の講演者を務めた立花隆氏は、さまざまな資料を駆使して、新聞を支えている収入が結局は日米ともに似通っており、それが弱っている大状況があるのだと主張していました。ちなみにシンポジウムでは、忙しいのか、滝鼻氏は前半に参加しただけで、質問タイムの前に退席してしまいました…。そんなこんなで、このブログもめでたく監視対象の仲間入りのようですね(涙。
| slapp | 未分類 | 05:20 | comments(0) | trackbacks(1) |
ウェブの成熟はアンチ・スラップ法の制定を要請する(少々理屈っぽい話)
更新が長らく停止してしまいました。訪問しては、がっかりしていた方には申し訳ないです。ウェブ上に情報をアップすることにこそ意義があると信じているものの、問題意識が広がる中で、追うべき対象が広がり、特に一次情報の発信をボランタリーに続けることがつらくなっていました。情報をアップすれば雪ダルマ式に義務感にとらわれ、きつくなる面があります。海外のブログのように手軽にpaypalの寄付システムのようなものが埋め込めて、もし当ブログのテーマに関心のある方々に些少でも応援していただくことが実現できていれば、気持ちも違ったと思うのですが、どうしたらいいかわからない。広告ネットワークの誰かが拾ってくれないものか…。

また裁判の各関係者から見ても、ブログでの発信者は、マスメディアの取材者よりも全く信用されないのだなと感ずる場面に遭遇することもあって、正直しんどい(これまで情報を送ってくださった方には感謝しています)。そして一方で、超長い目で見ればアンチ・スラップ法は制定されるだろうなと感じることもあって、小さなブログで情報を発信し続けることの意味を見失っていました。2ヶ月ぶりに少々理屈っぽくなりますが、アンチ・スラップ法が制定される必然について思うところを書きます。

ウェブ上の情報爆発をめぐるコネタとして、かつてグーグルの創設者のひとり、サーゲイ・ブリンは、地球上に存在するおおよその情報がウェブに収集されるには300年ほどかかると発言したと聞いたことがあります。この発言は逆に言うと、300年の時間があれば、およそ有意味な過去時点の情報は取り出し可能なかたちでウェブに格納されうるということを示唆しています。ウェブが、あらゆるメディアの一次的なプラットフォームになるときは近い(といっても何十年スパンの話ですが)と思われますが、ウェブ上の情報に接していて日々面白いと思うのは、人類の知がリアルタイムで量的にも質的にも、万人に見えるかたちで上書きされていく状況が生まれているということです。

そのような時代における情報の正確性や信頼性はどのようにして担保されるようになるのでしょうか。かつては(現時点でもそうかもしれませんが)、流通経路のボトルネックを握っている“産業としてのマスメディア”が、情報の精度を担保するというフィクションが成り立っていました。そうした時代には、マスメディアが偏った情報を発信したときのための反論権の議論や、発信者の権利に制限を加えるパブリック・アクセス権の議論が熱心になされていました。情報の受け手はそうした権利によって寡占的な情報発信者から発せられるの信頼性に関与すべきだという議論に説得力があったのです。

しかし今はそうした議論はかなり下火になりました。ウェブ上の情報発信者は(情報通信法の制定されていない現時点において)、伝統的なマスメディアであっても、個人のブロガーであっても、フラットに比較されうる状況下で情報を発信できるようになっています。こうした状況下で、かつての反論権の議論とよく似た、それでいて、おもむきの異なる議論が登場してきているのが、注目に値します。

それは「返信する権利」と呼ばれている概念です。リンク先のエントリー(「ブログ、そして、返信する権利」)を一読すると、現在フィリピンでは、「配信または放送事業体により、配信された、あるいは放映されたコンテンツによって、不当な扱いを受けたと誰かが感じた場合は、特定の期限内に、その作品と同じ紙面、または同等の時間で、自らの考えを発表するためのスペースや時間が無償で与えられる」という法案の議論が登場しているといいます。この法案の狙いは一見、伝統的なメディアに対して制約を課すかつての反論権の議論とたいして変わりません。

しかし目新しいのは、この法案はウェブ上の情報発信一般をも適用対象とするらしいことです。この法案が議論されているフィリピンの国内事情の詳細は不明ですが、ウェブ上の情報発信の正当性をめぐる紛争をどのようにして解決するのかという問題は、こんにちにおいて極めて興味深い論点です。

一般的に、紛争が発生した場合、不当性を主張する側が自己の主張を訴えるため、あるいは争点を確認するため、相手の見解を問い質すのが通常のステップです。そうした紛争に訴訟で決着をつけるのは当然あってもいい選択肢ですが、普通は情報発信者に異論でもって応える(返信する)行動を一番にとるはずです。言論には言論で対抗するというあり方です。

先の「返信する権利」の議論は、異論をもった相手の見解を第三者に晒す機会を与えることを情報発信者の義務として課すことになります。異論をもつ者と発信者の情報がフラットに第三者に検証されうるのです。サイト開設者やブロガーは情報発信を行う以上、一定の説明責任を課されるようになる制度設計だと言えます。

ところで話はとびますが、情報の発信者が情報の利用可能性をあらかじめ指定することによって情報共有を促進するクリエイティブ・コモンズ(CC)という運動があります。クリエイティブ・コモンズのベースにあるのは、情報をオープンに共有しあうことによって、情報をやりとりするうえでのコストが下がり、次なる新たなイノベーションが起きる、そのことに期待する、という発想だと思います(過去に現CEOの伊藤穣一氏によるプレゼンを聴く機会があり、エッセンスをそう受けとりました)。クリエイティブ・コモンズの運動は、発信情報にまつわるさまざまな権利を持つ既得権者と、せめぎあいながらも、浸透を続けています。オバマ米次期大統領もCCライセンスのもとにサイトを公開していますね。

上記二つの動き、紛争発生時の第三者による検証を促す権利の生成と、ウェブ上の情報共有のための仕組みづくりの運動から連想(妄想?)するのは、なんらかの紛争がおきたとき、ウェブ上に正確で信頼のおける情報を同定するための場が、うまく制度設計すれば、立ち上げることは可能ではないかということです。場といっても、紛争発生時に、まずはここで話し合いをしなさい(返信し応答し合いなさい)といった対話を実現するための公開の場です。そうした場は特定のサイト内を想定する必要は無く、第三者に検証して欲しい紛争が発生中ですとリンクを登録し目印を表示するだけで充分かもしれません。

司法とは、紛争が発生した際、どちらにどの程度正義があるのかを、国家が関与することによって同定するシステムです。そうして紛争が終結したあかつきには、当事者は次なるステップに向かっていくことができます。いわば国家という第三者が関与した“正義の上書き”です。そして裁判とは、引いた視点で見れば、ひとつの“対話”の形式です。

現在の司法システムは、裁判という“対話”に、けっこうなコストを要するシステムとなっています。裁判には、弁護士ら法を扱う専門家の助けを仰ぐのが、慣例となっています。しかし、はたして我々はギルド化している法律専門家の助力がなければ、“対話”ができない存在なのでしょうか。

クリエイティブ・コモンズは文化やアイデアを共有するための発想ではありますが、ウェブで情報が共有されイノベーションに向かう状況と、紛争発生時の対話の実現から解決へと至る道筋は、とてもよく似ています。ウェブの発達は、情報をやりとりするときのコスト(transaction cost)を下げることに多大なる効果を発揮してきましたが、ウェブは紛争解決を目指した“対話”のコストを下げることにも貢献できるのではないでしょうか。

幸か不幸かリアルな社会では、社会的な強者と弱者が存在します。社会的な強者とは強い情報発信力をもつ者、社会的な弱者は弱い情報発信力しかもたない者と言い換えることが可能でしょう。

SLAPPとは、紛争発生時に、現行の司法システムにおける“対話”のコストを悪用した、情報発信弱者の疲弊を狙った訴訟だと解釈することができます。このようなコストは、ウェブ上の“対話”によって乗り越えられる環境は、技術的にすでに整っています。問題は、見解の相違や訂正したい意見があっても、現状では、第三者に見えるかたちで情報発信できるような制度がないということです。だからこそ、先の「返信する権利」の概念が重要になってくるのです。

公開の場で低コストで“対話”が充分可能であるにもかかわらず、そうした手段をとらない姿勢はおかしいと気づくことは、SLAPPを違法と認定するアンチ・スラップ法の法理に結びついていくはずです。我々はウェブを活用し、社会をオープンにすることによって、紛争発生時に何が正義であるのかを同定するためのコストを、いま以上に下げることができるのです。(溜まってた考えを書いたら長すぎ…)
| slapp | 未分類 | 23:02 | comments(0) | trackbacks(0) |
「週刊ダイヤモンド」08年5月24日号に、対メディア高額訴訟リスト
当ブログは情報の蓄積を基本としているので、更新が滞っていた間にインプットしていた情報を、遅まきながらフォローしていきます。「週刊ダイヤモンド」の5月24日号は、「裁判がオカシイ!」と題した特集を組みました。

週刊ダイヤモンド 08年5月24日号

そのなかに「報道の萎縮が加速する!?多発する高額訴訟の実態」と題した記事があり、事例としてオリコンによる訴訟と読売新聞による訴訟がとりあげられています。記事には「多発する高額訴訟」という近年起こされたメディアを相手取った主な民事訴訟の一覧表があって、53もの事例が掲載されています。これは『ジャーナリストが危ない』(花伝社)の巻末リストと同様、貴重な資料です。表にあるうちメディア企業がメディアを訴えた例は4例あり、うち3例が読売新聞社による提訴となっています(もう1例は毎日新聞社によるもの)。また日経新聞元社長らが個人でメディアを訴えた例も表には含まれています。
| slapp | 未分類 | 14:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
判例時報No.2010号にオリコン訴訟地裁判決掲載
法律時報(法律時報社)の平成20年9月21日号(No.2010)の判例紹介コーナーに、オリコン訴訟の東京地裁判決が、「雑誌に掲載された音楽チャートに関するコメントが名誉毀損にあたるとされ、コメントをした者の不法行為が認められた事例」と題し掲載されています。単に判決文が掲載されているだけでなく、短い解説文が前段につけられています。ただし、無署名なので、どういう立場の人が解説を書いているのかは、わかりません。

解説文では、オリコン訴訟地裁判決は、「・・・本判決の判断は、名誉毀損と表現の自由の観点から見て妥当な判断と評価できよう」と書かれています。解説文は、類似した事例に言及していて、ラジオ番組の発言者について名誉毀損の成立を認めた先例として、東京地判 平2・8・27(判タ掲載)があると紹介しています。また、マスメディア等に情報を提供した者の責任が問題とされた裁判例を分析する論考として、升田純「現代型取引をめぐる裁判例(196)〜(201)」(法律時報掲載)という論文があるといいます。

この判決掲載は、弁護士の落合洋司氏が、地裁判決についてコメントしているブログのエントリーで知りました。
| slapp | 未分類 | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本外国特派員協会会報誌、オリコン訴訟地裁判決を受け記事化
no1shimbun200806
◇画像はFCCJのサイトで公開されているものから、会報誌6月号の表紙を引用。「引用され、訴えられ、有罪」と書かれた赤いテープが、口を封じています。デザインセンスに脱帽です。写真も撮ってあるのですが、キャプを反映させました。

そろそろ日本と海外の温度差について一言言っておくか。・・・っていうとちょっとふざけた感じに聞こえるかもしれませんが、オリコン訴訟地裁判決を受けて、出版社133社の経営者が連名で言論の自由の観点から懸念を表明していたことに対して、大手が参加していなかったことから、オリコン訴訟の問題など小さな問題にすぎないのではとみる向きもあるようです。

確かに日本の大手マスコミでは判決の結果が報じられた程度ですし、言論の自由の恩恵に与っているはずの業界団体も冷淡なものですが、外国籍のジャーナリストの間では、オリコン訴訟は関心をひく話題です。ジャーナリストにとってだけでなく、取材をされ引用される可能性のある人、つまり、あらゆる人の言論の自由にとって関係があることですから、ジャーナリストにとって本来なら一層興味をもつはずのテーマですし、この話題を大手マスコミが積極的に報じないということが、輪をかけて海外のジャーナリストの関心を引く理由になっているのです。

当ブログの更新が滞っていたので、もう3ヶ月前になってしまいますが、日本外国特派員協会(FCCJ)の会報誌「Number One Shimbun」の6月号が、オリコン訴訟地裁判決後に大きな記事を掲載しました。以下は掲載号のPDFです。

Vol. 40, Issue 6 - June 2008: Quoted, Sued, Guilty

この号の編集にあたったデイビッド・マックニール氏は、編集記で、強圧的に報道の自由を弾圧するインドネシアのような国に比べれば、日本では、厄介な官僚と締め切り以外、めったに報道をめぐる不快さを感じさせられることはないが、オリコンの名誉毀損訴訟は、その自己満足に警告を発しているとします。そして日本国内の大手メディアがオリコン訴訟をとりあげないことに困惑させられていると書いています。ただ烏賀陽が信じているように、オリコンが大企業だから大手メディアがとりあげないなどという、そんな単純なことなのか?とも書いています。違った理由があるのでは、と問いかける文章です。

「口封じされて、縛られて」と題したギャビン・ブレア氏の記事は、オリコンが記事で引用された情報源となったコメント者だけを訴えていること、しかもコメントをしたとされる烏賀陽が誤って引用されたと主張しているため、オリコン訴訟が込み入った構造にあることを紹介しています。そして当該記事が作成されるまでとその後の烏賀陽のオリコンへの取材申し込み(オリコンは拒絶)の経緯などが詳しく書かれています。また烏賀陽は、この取材時点で、裁判関係の費用に180万円ほどかかっていると取材に答えています。記事中、エンターテイメントの分野に精通した内藤篤弁護士のコメントがあって、オリコン訴訟に似た裁判で、漫画ライターが敗訴したケースがあるとされています。

*このエントリーは日本外国特派員協会関係者も読むかもしれないので、日本メディアの特殊性について、通底するテーマをもった記事をパブさせていただきますと、当エントリーを書いている岡崎は、3ヶ月前に以下のような記事を書きました。
日刊サイゾー:大手マスコミが「記者クラブ」で“報道の自由”を蹂躙! (前編) (中編) (後編)
| slapp | 未分類 | 14:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリコン訴訟、出版社代表133名が高裁での公正な審理求め声明
オリコン訴訟、出版社代表133名が高裁での公正な審理求め声明(2)

(当ブログ注(1)よりつづき。声明に名を連ねた出版社133社の代表です。JANJANの記事では、声明を1Pで見れます)

青木理人(青木書店代表)、青山賢治(大蔵出版代表)、安藤節子(芽ばえ社代表)五十嵐美那子(生活思想社代表)、石井秀樹(インスプレス代表)、石井雅(風響社代表)石垣雅設(新泉社代表)、石川秀弘(VIENT代表)、石田俊二(三元社代表)市毛研一郎(ぶどう社代表)、稲垣喜代志(風媒社代表)、岩坂純(麦秋社代表)上野良治(合同出版代表)、内山正之(西日本出版社代表)、梅田正己(高文研代表)浦松祥子(山吹書店代表)、江村信晴(白順社代表)、遠藤真広(木犀社代表)大江正章(コモンズ代表)、大下敦史(情況出版代表)、大橋勲男(都政新報社代表)小川研(労働大学出版センター代表)、小木章男(凱風社代表)、奥川隆(子どもの未来社代表)小野利和(東京シューレ出版代表)、小野田英侍(アニカ代表)、柏田崇史(舷燈社代表)片倉和夫(八朔社代表)、上浦英俊(柘植書房新社代表)、川上徹(同時代社代表)木内洋育(旬報社代表)、菊地泰博(現代書館代表)、貴志元則(道出版代表)北川明(第三書館代表)、北村肇(週刊金曜日代表)、北山理子(太郎次郎社エディタス代表)木津川計(夏の書房代表)、清田義昭(出版ニュース社代表)、久保則之(あけび書房代表)久保田宣子(JDC出版代表)、栗原哲也(日本経済評論社代表)、栗原佑子(星の環会代表)桑原晨(めこん代表)、小池和三郎(学習の友社代表)、高二三(新幹社代表)河野久美子(あさま童風社代表)、小林健治(にんげん出版代表)小林力(リサイクル文化社代表)、駒木明仁(教育史料出版会代表)、小山光夫(知泉書館代表)斎田順子(編集工房球代表)、齋藤登志喜(平和文化代表)、相良景行(時潮社代表)桜井香(桜井書店代表)、佐藤英之(批評社代表)、沢田健太郎(民衆社代表)塩見誠(アットワークス代表)、篠田健三(晩香書屋代表)、篠田博之(創出版代表)渋澤浩子(イザラ書房代表)、清水定(けやき出版代表)、下田勝司(東信堂代表)白井隆之(燦葉出版社代表)、鈴木茂(アルテスパブリッシング代表)、鈴木宏(水声社代表)鈴木誠(れんが書房新社代表)、高須次郎(緑風出版代表)高瀬明彦(パーソナルケア出版部代表)、高橋明義(有信堂高文社代表)高橋栄(風濤社代表)、高橋利直(ほんの木代表)、高橋雅人(すいれん舎代表)高橋矩彦(スタジオタッククリエイティブ代表)、武石和実(榕樹書林代表)竹内淳夫(彩流社代表)、竹村正治(かもがわ出版代表)、立川勝得(亜紀書房代表)田村一芳(一光社代表)、塚田一未(東銀座出版社代表)、辻一三(青灯社代表)辻信行(海鳴社代表)、鶴田實(五月書房代表)、鶴見治彦(筑波書房代表)田悟恒雄(リベルタ出版代表)、中川進(大月書店代表)、中里英章(七つ森書館代表)中野理惠(パンドラ代表)、中村吉郎(草の根出版会代表)、名古屋研一(ひとなる書房代表)奈良義巳(フィルムアート社代表)、成澤壽信(現代人文社代表)、永滝稔(有志舎代表)新沼光太郎(いかだ社代表)、西岡泰和(気天舎代表)、野崎渡(ひかり書房代表)萩原英昭(ハギジン出版代表)、羽田ゆみ子(梨の木舎代表)、林雅行(クリエイティブ21代表)原嶋正司(績文堂出版代表)、平田勝(花伝社代表)、比留川洋(本の泉社代表)深田卓(インパクト出版会代表)、藤原眞昭(群羊社代表)、細井健司(健学社代表)前野眞(架空社代表)、政門一芳(汐文社代表)、増本利博(明窓出版代表)松田健二(社会評論社代表)、松本功(ひつじ書房代表)、松本昌次(影書房代表)水野久(晩成書房代表)、南節子(労働教育センター代表)、宮城正勝(ボーダーインク代表)向原祥隆(南方新社代表)、村田浩司(唯学書房代表)、村山恒夫(新宿書房代表)茂木敏博(雲母書房代表)、森信久(松柏社代表)、森下紀夫(論創社代表)八尾正博(連合出版代表)、安田喜根(マネジメント社代表)、山崎亮一(せせらぎ出版代表)山田一志(海象社代表)、山田克己(育文社代表)、山本辰義(北斗書房代表)横山豊子(自然食通信社代表)、吉澤隆(白楽代表)、吉田朋子(白澤社代表)吉田信彦(恒和出版代表)、吉村親義(アテネ社代表)、米川浩(米川研究所代表)米山傑(一声社代表)、和田悌三(一葉社代表)
 計133名
| slapp | 未分類 | 21:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリコン訴訟、出版社代表133名が高裁での公正な審理求め声明
オリコン訴訟、出版社代表133名が高裁での公正な審理求め声明(1)

すでにJANJANにて報じられていますが、出版社の代表133名が連名で、オリコン訴訟の東京地裁判決に抗議し、かつ東京高裁での公正な審理を求める共同声明を、9月1日付けで発表しました。今月3日に開かれた出版人懇談会の会場にて声明は配布され入手していましたので、公表されるべきものとして、2回に分けて当ブログでもアップします。これは3月に出版社57社が共同でオリコン訴訟への懸念を表明したものの、延長線上でまとめられたものです。出版界にとって、オリコン訴訟のはらむ危険性が、いかに深刻な事態と受け止められたかが、わかるはずです。声明文中には、アンチ・スラップ法の存在への言及もあります。なお、当ブログではリンクできていませんでしたが、地裁判決後の5月2日、出版労連が、オリコン東京地裁判決に関する抗議の声明を出していました。

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オリコン訴訟東京地裁判決に抗議し、高裁での公正な審理を求める声明

 オリコン株式会社(以下、オリコン社)が、フリージャーナリストの烏賀陽弘道氏に5000万円の名誉毀損損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁は去る4月22日に烏賀陽氏に100万円の支払いを命じる判決を下しました。

 と同時に、「オリコン社の提訴は裁判制度を悪用し、個人に的を絞った恫喝的訴訟で違法」とした烏賀陽氏の反訴を棄却しました。
 
 東京地裁は憲法で保障された「言論・出版の自由」「国民の知る権利」などの点に即して充分かつ公正な審議を尽くしたとは言いがたく、そして、それら「言論・出版の自由」「国民の知る権利」をないがしろにするきわめて不当な判決を下しました。

1.本件は、月刊誌『サイゾー』編集部の電話取材に烏賀陽氏が応えてのコメント「オリコンは予約枚数をもカウントしている」「オリコンはランキングの調査方法をほとんど明らかにしていない」が同誌2006年4月号に掲載されたことにより、オリコン社が真実でないコメントによって名誉を毀損されたとして、コメントの真実性が争われていました。

 上記コメント内容は『サイゾー』の記事を待つまでもなく、既に広く音楽業界で語られていることとはいえ、烏賀陽氏代理人側はコメントの真実性を立証すべく、オリコン社の売上調査協力店5店の店長から聞き取り調査し、「予約枚数をカウントしている」との証言を得て、それを証拠として提出し、また津田大介氏(音楽ジャーナリスト)も同様の元従業員証言を陳述書として提出しています。ところが、判決では「店名が明らかではない」「元従業員が誰であるのか明らかにされていない」ので信用できないとし、司法としての努力を尽くすことなくそれら証言を一顧だにしませんでした。

 内部告発的な証言では証言者・調査協力者の保護のため、情報源を秘匿するのは当然のことであり、さまざまな社会的な不正義を正すうえでも、不可欠な配慮とされているところです。今回の東京地裁の対応と判断はその流れに明らかに逆行するものです。

 このような判決がまかりとおり、取材源秘匿の原則が否定されれば、事実上、雑誌や書籍の編集発行はきわめて制約されます。憲法に保障された言論・出版の自由、報道の自由は大きく阻害されます。そして、国民の知る権利にとって由々しい事態を招くことは明らかです。

2.ところで、各方面から指摘されているように、オリコン社側提訴の異常性は、雑誌の発行元や編集部を訴えるのではなく、烏賀陽氏個人のみを訴訟対象とし、しかもいきなり5000万円もの高額な賠償を提訴したことにありました。
 
 それは明らかに、音楽ジャーナリスト烏賀陽氏個人の発言を封じるための訴訟であり、訴訟権の濫用といわざるを得ません。
 
 実際、オリコン社はプレスリリースで、「この訴訟の目的は名誉毀損の損害回復ではなく、烏賀陽氏に発言の過ちを認めさせ、謝罪させることだ」と、言論・批判封じが訴訟の目的であることを公言さえしています。
 
 当然、烏賀陽氏は「訴訟に名を借りた違法な言論封じ」としてオリコン社を反訴しましたが、東京地裁はオリコン社側提訴の異常性を充分かつ公正に吟味することなく、「一般に、不法行為責任を負担するものが複数存在する場合に、その被害者がすべての不法行為責任者に対して訴訟を提起する義務を負うことはない」とのおおよそ法を司る立場とは思えない「詭弁」で烏賀陽さんの反訴を退けました。さらに、「原告が5000万円の損害賠償を求めている点も、一般に、名誉棄損訴訟においては、損害額が比較的に高額に設定されるのが通常」だから違法とは言えないという、一般常識とは大きく隔たった判断を示しました。

 ちなみに、欧米ではこのような高額の賠償金による恫喝訴訟は禁止されています。また、日本の司法においても、先般の武富士によるいわゆる「批判封じのための恫喝訴訟」が、「言論、執筆活動を抑圧又は牽制するために訴訟を提起した行為は違法」と断罪されていますし、「言論による批判に対しては、民主主義社会においては、資料の裏付けのある言論で応酬することが求められている」との司法判断も下されています。

 今回の東京地裁判決はそれら司法判断の流れにも逆行し、「高額訴訟による言論封じ」「個人に対する恫喝」「取材源そのものへの攻撃」を容認する、憲法の原則に反する判決と言わざるを得ません。

 私たち出版社代表は、東京地裁判決に強く抗議し、東京高裁では「言論・出版の自由」「報道の自由」「国民の知る権利」などの点をもふまえて、充分な審理を尽くし、公正な判断を下すよう強く求めるものです。
 
 2008年9月1日  (当ブログ注(2)へつづく)
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