SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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はじめに
SLAPPは、自らに批判的な相手に、精神的にも経済的にも打撃を与え、萎縮させることを狙った訴訟を指します。裁判が提起されても、原告側が、この裁判は「いじめ訴訟」「嫌がらせ裁判」であると宣言することは、ありません。

当ブログは、司法界で再構築されつつある名誉毀損法理について、考えていこうとする試みです。ですから素材をなるべく集めるため、現在進行形の裁判についても、訴訟権の濫用を訴える当事者の声があれば、事例としてとりあげます。その際は、論点の明確化と事実の紹介に努めます。

この裁判はSLAPPにあたるのでは?この国にはこんな法律がありますよ、といった情報をお持ちの方は、掲示板 SLAPP WATCH BBS、やメール、コメントなどで情報をお寄せください。
                      (管理人)

| slapp | 法律よもやま話 | 00:00 | - | - |
堀江貴文氏が立花隆氏らを訴えている件・雑感
元ライブドア社長の堀江貴文氏が、メディアに掲載された記事をめぐって、名誉毀損の損害賠償を求める裁判が現在進行しています。上掲の『日本タブー事件史3』(宝島社)は夏前に発売されたものですが、この本のなかに堀江氏の起こした裁判について、短い記事があります。堀江氏は日経BP社と評論家の立花隆氏に対して、賠償金5000万円と全国紙5紙への謝罪広告掲載(9513万6000円相当)を求め、名誉毀損の損害賠償を求める裁判を昨年起こしているのです。日経BPのサイトで連載されていた、「メディア ソシオ−ポリティクス」の記事に、堀江氏と暴力団とのつながりを考察する記述があったことが問題になっています。記事ではこの裁判が立花氏の連載が中止になった原因だとされています。また堀江氏は同じく昨年、堀江氏がカジノに関与していたとする週刊現代掲載の記事をめぐっても、名誉毀損で提訴しています。

堀江氏が最近再開したブログに、井上トシユキがいい加減なことを言っている件|六本木で働いていた元社長のアメブロというエントリーがあって、名誉毀損訴訟に関係することが少し書かれています。そのエントリーによると最高裁に上告中の証券取引法違反の罪に問われている刑事裁判の代理人が、高井康行弁護士から弘中惇一郎弁護士に代わったことがわかります。そして名誉毀損訴訟に関しては、引き続き、高井康行弁護士が代理人を務めるとのことです。

この堀江氏のエントリーが興味深いのは、堀江氏が新たにブログを開設した理由として、「ネット上にあふれる、いい加減な情報源に基づく、一方的な私の揶揄記事が間違いであることをアピールするため」としている点です。現在のようにウェブ上で自らの見解を瞬時に表現できる時代、しかも情報の受け手が、伝統的なマスメディアが発信する情報と当事者が発信する情報を、フラットに見比べられる時代においては、ものごとの評価とは、常に情報の受け手の目線に晒されながら、時々刻々検証され更新されていくものになっています。堀江氏となじみの深い経済の世界に例えると、ウェブ上のさまざまな情報は、変動相場制のもとに置かれているといっていいかもしれません。情報の真偽を判断し評価を下すリテラシーが、これまでになく個々の受け手に求められている時代です。

名誉毀損とは社会的評価を貶める表現を指すわけですが、その名誉も、それにまつわる表現も、固定化されたものとは言い難い。事実に基づかず他者を貶めるような表現は、表現者自らの信頼を下げること(名誉毀損)につながります。もちろんウェブ上の情報空間には、サイバーカスケードと呼ばれる振れ幅の大きい現象が起こりえますが、それも株の比喩で例えるなら、株の世界に値幅制限という措置があるように、情報の価値を受け手が判断する際に、一定の時間的猶予をもって評価する慣習がリテラシーとして成熟してくる可能性があるのではないでしょうか。

以前のエントリーで、「トラブルに関心をもつ第三者にみえるかたちで、やりとりをする情報環境が既にある」のだから、「表現をめぐるトラブルが発生したとき、即座に金銭的賠償を求める裁判を起こすのではなく、一定の対話のプロセスが社会的慣習として成立していく可能性」があるのでは、と考えたのは、まさに堀江氏がブログを再開したように、ウェブ上で対話的な表現が可能になってきているからです。

アンチ・スラップ法は、言論を封じ込める理不尽な訴訟を違法だとする法理のもとに成立してきています。そのアンチ・スラップ法がシリコンバレーのあるカリフォルニア州で先進的に発達を遂げていることは、非常に注目すべきことのように思われます。というのも、SLAPPは名誉毀損や財産権(著作権)の侵害をたてに表現者を抑圧する形式をとるものが多いわけですが、それらは結果的に情報流通の阻害をもたらすものだからです。

インターネットの登場により社会の情報流通のあり方は劇的に変化しましたが、インターネットをベースで貫く思想とは、池田信夫氏がインターネットの創始者=デビッド・クラークの言葉「われわれは王も大統領も投票も拒否する。信じるのはラフな合意と動くコードだ」を引いて、コチラのページで語っているように、ベスト・エフォート(最大努力)型の思想だと言われています。それは確定的・固定的な思想、ギャランティー(保証)型の思想と対比される、情報処理のあり方です。

インターネットがもたらした新たな情報空間は、固定的な名誉や確定的に算出可能な財産権(著作権)という考え方に修正を迫っているように思えてなりません。アンチ・スラップ法の発達は、情報流通の価値を再評価する現代の時代的要請のような気がします。インターネットの価値に賭けることにおいて余人の追随を許さなかった堀江氏が、ウェブ上で反論を試みるよりも、高額賠償を求めて裁判を起こしていることは、そこはかとなく違和感を感じる一件です。
| slapp | 法律よもやま話 | 20:08 | comments(1) | trackbacks(0) |
内部告発サイト・Wikileaks復活にアンチ・スラップ法が果たした役割(2)
すると一転、裁判所は合衆国憲法修正第一条を理由に命令を撤回し、サイトの運営は許可され、仮差止めが解除されます。裁判は続行することになり、Wikileaksは復活、するとJulius Baer銀行は訴えを放棄したのです。ここまでは日本語のニュースサイトでも紹介されている経過です。オモテに出されたくない文書への差し止め申し立て、仮差し止めを裁判所が容認、本裁判の移行に向かうというプロセスそのものは、黒薮vs江崎裁判と同じです。でも米国では、本裁判の前に裁判官の判断を仰ぐ機会が一度では終わらないようです。

この裁判を知ったとき、裁判が米国、とくにカリフォルニア州で争われていたことで、これはSLAPPが必ず争点になる、と直感して注目していました。結局、Wikileaks側が却下の特別動議を申し立てるまでもなく終結したので話題になりませんでしたが、一連の出来事の最終期の解説記事のなかに、anti−SLAPPの考え方が影響を及ぼしたことを語るコメントを発見しました。(下記リンク参照)

記事の中で、市民団体・Public Citizenの弁護士がコメントしていて、Julius Baer銀行が訴えを引っ込めたのは、アンチ・スラップ法のもとで反訴を起こされることを恐れたのが明らかだ、としています。裁判を継続すれば内部告発された不都合な事実はそれまで以上に広がり、訴訟でも賠償を求められるリスクがありました。株価も騒動のなかで2割下落したそうです。

今回の出来事をのり越えたからといって、今後もWikileaksが安泰とは言い切れません。しかし、こうしたサイトの需要が、いや必要性がなくなることはないでしょう。ないと力の弱いものの声を届ける回路が失われてしまいます。今回の出来事は、アンチ・スラップの考え方は、インターネット上の表現の自由を守る上でも、実効力を発揮していることを教えてくれました。

◇参考
Swiss Bank Abandons Lawsuit Against Wikileaks -- Bank Julius Baer -- InformationWeek
Bank Julius Baer & Co v. Wikileaks | Electronic Frontier Foundation
米裁判所、内部告発サイト「Wikileaks」のドメイン使用禁止命令を撤回
米判事、内部告発サイト「Wikileaks」のドメイン使用禁止命令を解除
| slapp | 法律よもやま話 | 10:05 | comments(0) | trackbacks(5) |
内部告発サイト・Wikileaks復活にアンチ・スラップ法が果たした役割(1)
今年2月、Wikipediaと同様に不特定多数の人々の意見を集めるかたちで運営されている内部告発サイト「Wikileaks」が、企業の機密文書を配信しているとして裁判所に閉鎖を命じられ、それに対して人権団体から反対の声があがったことで、閉鎖命令が撤回された出来事がありました。この撤回の背景には、アンチ・スラップ法の存在が影響力を発揮したという見解を見かけたのでフォローしておきます。アンチ・スラップ法の存在は、企業による不当な提訴を抑止し、結果的に内部告発の後押しにも貢献しています。

Wikileaksは企業や政府の不正を告発する匿名の投稿を受けつけ、通常第三者が知りえない漏洩文書を掲載したりすることに特化したサイトで、2006年に開設。これまでグアンタナモ米軍基地の収容所に関する文書や中国の人権侵害に関する文書など公共性の高い文書も掲載されてきたそうです。

今回の事件は今年2月、スイスのJulius Baer銀行が、WikileaksとWikileaksのドメイン名を登録している米国企業Dynadotを相手取り、銀行の顧客の個人的な取引に関する情報を無断で掲載したとして、ドメインの使用禁止を米連邦地裁に訴えたことに始まります。訴えは米国カリフォルニア州のサンフランシスコ連邦地方裁判所に提起されました。問題となった文書は、Julius Baer銀行の元従業員が、同銀行が海外でマネー・ロンダリングを行ったり、脱税に関与したりしていることを示すものでした。

Julius Baer銀行の訴えは、ドメイン抹消を求める仮差止めの申し立てとして行なわれ、裁判所は、DynadotがWikileaksを抹消するとJulius Baer銀行と合意したため、これを追認、ドメインの使用禁止を命じました。このためWikileaksは一時、閉鎖されてしまいます(米国以外でミラー・サイトが開いていたようですが)。この事態に、電子フロンティア財団(EFF)や米自由人権協会(ACLU)といった米国内の有力な市民団体が言論の自由の侵害だとして一斉にWikileaksの支援を表明、弁護を買って出て、命令撤回を求めました。[(2)へ]
| slapp | 法律よもやま話 | 02:05 | comments(0) | trackbacks(3) |
三浦和義氏逮捕の報道を見て
ロス疑惑で世間に騒がれた三浦和義氏がサイパンで逮捕されたことで、今後、報道が過熱していくことでしょう。三浦和義氏は、拘置所に収監されているときに、報道被害を訴える名誉毀損の訴訟を多数提起し、その多くで勝訴判決を得ました。すでに報道合戦がはじまっていますが、名誉毀損や報道被害のテーマをめぐり、有益な情報が目についたときはクリップしてみたいと思います。
三浦元被告:過熱報道に名誉棄損訴え 無罪確定後 - 毎日jp
(前略)
一連の報道に対し、三浦元被告は、東京拘置所の中から多数の名誉棄損訴訟やプライバシー侵害訴訟を起こした。弁護士を頼まない本人訴訟を含め、計約530件の訴訟を起こし、元被告によれば約8割に勝訴したという。

三浦氏が報道被害を訴えた対メディア名誉毀損訴訟を支援した弁護士として、当ブログでとりあげた裁判でも何度か名前が出てきた弘中惇一郎、喜田村洋一の各氏が有名です。三浦氏逮捕を受けて、事件の中身だけでなく、アメリカの司法制度は日本とどう違うのか、陪審制のもとでの報道はどのようになされているのか、過去の対メディア訴訟で敗訴したメディアの報道は今回どうなっていくのか、さまざまな論点が気になります。
| slapp | 法律よもやま話 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(7) |
ダイヤモンド社vsJASRACの名誉毀損訴訟、地裁判決
インプットした情報の日付を気にしすぎて更新が停滞してしまう当ブログです。でもキニシナイ!そんなわけで、注目に値する裁判の判決として、ダイヤモンド社vsJASRACの件についても。

2月13日、東京地裁は、「週刊ダイヤモンド」2005年9月17日特大号に掲載された、「千億円の巨大利権 音楽著作権を牛耳るジャスラックの腐敗」などと報じた記事で名誉を毀損されたとして、JASRAC(日本音楽著作権協会)が、発行元のダイヤモンド社と記事を執筆した社員に計約4300万円の損害賠償と謝罪広告を求めていた裁判で、JASRACの訴えを認め、550万円の支払いを命じる判決を命じました。

報道によると、加藤謙一裁判長は判決で、「記事内容は真実の証明がなく、論評としても重要な部分は真実ではない。真実と信じる相当な理由もなく、表現や体裁もかなり一方的かつ独断的」と指摘、名誉毀損を認定しました。記事が、楽曲使用料徴収業務について「横暴な取り立て」とか、使用料の分配業務について「不透明」「あいまい」と表現した点などが、争点となっていました。ダイヤモンド社は控訴の方針とのこと。

この記事は、ヤフーが2006年初頭に、2005年に書かれた注目の雑誌記事をネット上に掲載し、読者に投票をさせる企画をやったときの一本に選ばれていた記事で、ネット上でもかなり話題になったので、ご存知の方もいるかもしれません。最近までまだネット上で読めたのですが、地裁判決後に削除された模様です。

判決後に著作権問題に詳しいジャーナリストの津田大介氏がTwitterで、判決への感想を書いていました。

これは、日本の名誉毀損裁判では、訴えられた表現者の側に真実性の証明が課されることと、(世に知られていない事実を伝えようとする)ジャーナリズムにおいては、法廷においても取材源を秘匿しなければならないときがあり、もともと真実性の証明が難しいということを指しているのでしょう。

判決後、JASRACは即座にサイトでコメントを発表していました。一方、ダイヤモンド社はサイトを見る限り、裁判をやっていることすら、わかりません。一般的に言って、実社会で影響力あるメディアをもっているものほど、ネットでの情報発信に、熱心ではないようです。

世論への働きかけという意味ではJASRACは、かなりマメな組織です。ですから、組織として、誤った情報だと思われるものを発見したら、ネットで反論してみてはどうかと思うのですが、金銭的賠償を求める道が選ばれました。でもコチラのような動画(YouTube - wtf!! The legend of JASRAC【すごいぜ!JASRAC伝説】)がネットで有名なことはJASRACも十分認識しているはずで、取材をしたうえで書かれた特定の記事を訴えた理由は不明です。

前エントリーで、名誉毀損裁判のハードルが下がっている現状を、新たな時代の到来なのか、それとも何かの過渡期なのか、わからないと書きましたが、表現をめぐるトラブルが発生したとき、即座に金銭的賠償を求める裁判を起こすのではなく、一定の対話のプロセスが社会的慣習として成立していく可能性もないではありません。なぜならトラブルに関心をもつ第三者にみえるかたちで、やりとりをする情報環境が既にあるからです。随分と先読みの話になってしまいますが。

◇参考
「JASRACが横暴な取り立て」は「真実との証明なし」 ダイヤモンド社に賠償命令 - ITmedia News
東京地裁、JASRAC名誉毀損でダイヤモンド社に賠償命じる 2008/02/14(木)
| slapp | 法律よもやま話 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(1) |
ランキング作成が名誉毀損で訴えられる時代
そんなわけで、理由づけもすんだところで、SLAPPとは呼べないとしても、注目に値する裁判例をクリップしてみたいと思います。

コーヒーショップチェーンの「ベローチェ」を経営するシャノアールが、雑誌「おとなの週末」昨年10月号の「人気カフェ チェーン ランキング」という記事で、11チェーン中最下位と記載されたことに対し、出版元の講談社に、1100万円の損害賠償と出版差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こし、すでに口頭弁論も始まっていることが、産経新聞で報じられました。記事によると、シャノアール側は訴状で、以下のように訴えています。

「ベローチェ」が講談社提訴 「おとなの週末」でランク最下位にされ (1/2ページ) - MSN産経ニュース
ランキングが一般的評価に基づくものではなく、担当したライターの個人的感想に基づいていると指摘。このランキングについて、「個人の主観的評価であることを示す記載が目立たず、わかりにくい」と主張、「記事の内容が客観的事実であるかのような印象を読者に与えている」としている。
この裁判を受けてアメーバニュースが、ある編集者の反応を記事にしています。以下、一部抜粋です。
ベローチェが講談社訴える「もう批評はできない」の声 - Ameba News
前出編集者は「何かをホメなくては企画ができない風潮に最近はなっています。この裁判で講談社が負けるようなことがあれば、もはや書評も映画評も美味しいお店ランキングも、音楽レビューもすべて成立しなくなることでしょう。(後半略)」
この編集者はコメントの中で、レストランやホテルの格付けガイド誌、ミシュランにも言及しています。ミシュランは覆面調査員の主観的評価を集めて作られていることで有名です。ランキング作成の手法は公正なのか客観的なのか、といえば、例の音楽チャート作成企業を思い出しますが、それはさておき、こういった裁判が起きる時代には、ランキングビジネスや、それを扱った報道や表現はどうなってしまうのでしょうか?ちょうどZAKZAKが、民間信用調査機関が、倒産の可能性のある企業を実名をあげて指摘するセミナーを開いたことを記事にしていました。

ZAKZAK 危ない300社マル秘実名情報…その驚愕の中身とは

こういった企業格付けビジネスでは、客観的な指標とともに、、客観的に明らかにできない(≒主観的ととられる場合もある)、取材源を明かせない情報を加味して、ランキングが公表されることがあります。それを信用するかしないかは、情報の受け手次第であり、受け手にリテラシーが求められています。ちなみにこのZAKZAKの記事では、セミナーで指摘された危ない企業のいくつかが類推できるよう、ぼかしつつ書かれています。ただ記事の最後は、次のような文で締められます。
経済無策の福田政権のもと、「危ない会社300社リスト」から実際に経営が行き詰まる会社が現れないことを祈るばかりだ。
こうしたフォローを入れなければ、記事が成立しづらいのだなと読み取ることができます。否定的に評価を下すだけでなく、否定的に評価されているとの情報を伝えるだけでも、訴えられる可能性があります。この裁判の妥当性はともかく、こうした裁判が起こされること自体は、万人にとって、文章表現の新たな時代の到来なのか、それとも何かの過渡期なのか、これといった答えはありません。
| slapp | 法律よもやま話 | 11:09 | comments(0) | trackbacks(3) |
そもそも表現とは社会的評価をめぐる何か (流対協セミナー報告)
先日、出版流通対策協議会(流対協)のセミナーを聴講したところ、大変得るものが多かったので、ご報告します。セミナーは、高額賠償請求の名誉毀損訴訟について、流対協の会員社が経験した裁判の事例を、当事者となった出版社社長とその代理人を務めた弁護士から話していただき、教訓を共有する集まりでした。

2005年1月、緑風出版が出版した『崩壊したごみリサイクル−御殿場RDF処理の実態』(米山昭良著)の記述が名誉毀損にあたるとして、元御殿場市長の男性が、執筆者と緑風出版を相手に、500万円の損害賠償を求めて静岡地裁に訴えました。この訴えが起こされたのは、この男性が市長復帰を目指して出馬した市長選挙の告示2日前のタイミングでした。ちなみに書籍の発行は2004年6月です。この市長選に男性は落選しますが、裁判は続き、2007年3月、原告の請求は棄却されました。その後、原告は東京高裁に控訴したものの、2007年5月に控訴を取り下げ、裁判は終結しています。

被告・緑風出版側は、原告の訴えは選挙目的の訴えであり、訴権の濫用にあたるとして門前払い的な却下を求めました。しかし静岡地裁の判決は、書籍の記述は名誉毀損に該当し、原告の社会的評価を低下させるとしたうえで、名誉毀損の違法性阻却事由を満たすために、原告の訴えを却下するという論旨の判示でした。

日本における現行の名誉毀損の法理[刑法230条]では、第一に当該表現が対象の社会的評価を下げるものかどうかが判断され、社会的評価を下げるものだとすると、名誉毀損(の違法行為)と認定され、そののちに、違法性を阻却する免責要件(公益性・真実性・真実相当性)が検討されて、最終的に違法な名誉毀損であるかどうかが判断されるという論旨をたどります。

セミナーでは、この論旨の構造そのものに疑問の声が多数あがりました。講師を務めた御殿場RDF裁判の弁護人・樋渡俊一氏は、こうした名誉毀損の条項のあり方そのものが、表現の自由を定めた憲法に違反しているとする説が研究者のなかにあることを教えてくれました。

また、2007年4月に彩流社が出版した『ルーシー事件−闇を食う人びと』(松垣透著)をめぐる報告がなされました。彩流社は、ルーシー事件に絡んで逮捕された被告から、同年5月、名誉毀損を理由に、出版物頒布禁止の仮処分を東京地裁に申し立てられ、さらに、2億円の損害賠償を求める裁判を同裁判所に起こされました。仮処分については地裁・高裁ともに原告の申し立てを棄却。裁判のほうは、2007年12月、東京地裁で原告の請求を棄却する判決が下されましたが、高裁に係属される模様だということです。

セミナーで印象に残ったのは、ある出席者が、そもそも表現とは、社会的評価や名誉をめぐるもの、いわば、社会的評価や名誉をめぐる闘争であって、社会的評価を下げるものだから“原則的に”許されないなどとされてしまう(現行の名誉毀損の)法律はおかしいのではないか、と発言したことです。特に文学や芸術は、何が真実かはわからないのであって、社会的評価を下げる記述だからダメとなってしまうのでは、表現が成り立たないといったことも指摘していました。報道とて、論評を含まなくても、取りあげ方で評価を含む表現を実現しようとするものであって、つくづく示唆深い発言でした。
| slapp | 法律よもやま話 | 18:49 | comments(0) | trackbacks(1) |
権力側も躊躇なく裁判を起こす時代に?
ブログを巡回しているうちに、福田康夫政権をつくった新5人組の合意メモ:現役雑誌記者によるブログ日記!by オフイス・マツナガというエントリーが目に留まりました。福田新政権樹立にあたって事前に「密談」したと報道されている政界の実力者、青木幹雄、森喜朗、中川秀直、野中広務、そして福田康夫の各氏5人が、政権の課題として合意したとされる内容が取材成果として公開されていました。その中に当ブログとしても注目すべき内容が一部含まれていたので紹介します。

オリコン訴訟が起こされて以降、ウェブ上の表現も、力あるものから名誉毀損で訴えられ、封じ込められるような事態が増えてくるのではないかと推測されたのですが、実際に政治の場で、積極的に裁判を活用することによって権力への批判に対応することが検討されているようです。一般に力あるものというのは、経済力や人脈など裁判以外の手段を使っても目的を達成することが可能であり、かつては裁判に訴えるのは最終手段だったように思います。特に権力者が司法を活用するには慎重でなければ、表現の自由を規制するのではないかとの懸念が浮かんだものでした。福田新政権はスキャンダル・マスコミ対策として、裁判を躊躇なく活用する可能性があるのかもしれません。この点は安倍前政権の姿勢を継承している印象です。以下合意内容とされるものの一部引用です。

福田政権の元でも、閣僚の問題点がでてくるかもしれない。各派閥、各閣僚のマスコミ対応、スキャンダル報道への対応を一元化して対応する。そのため内閣調査室との密接な関係をきずき、さらに自民党調査室の情報収集能力をあげる。そのために、予算、人員を増加する。マスコミ対策では旧来の、新聞、テレビ、雑誌・週刊誌だけでなくて、最近はブログなどのインターネットをつかった報道やニュースへの対策も講じる。基本は、名誉毀損に該当するような報道、ニュースがあれば、躊躇せずにただちに裁判などの公的な対応をする。そのための一元的な情報を管理するシステムをつくるべき。
| slapp | 法律よもやま話 | 23:35 | comments(0) | trackbacks(30) |
弁護士情報お役立ちサイト
弁護士に関する情報が欲しいなと思ったとき、ウェブで無料で利用できるサイトのリンクを厳選し、備忘録的につくってみます。

【日弁連】 弁護士情報検索
日本弁護士連合会の検索サービス。弁護士は全員登録しています。

弁護士会一覧、弁護士の個人情報付
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日弁連 - 弁護士報酬(費用)
日弁連による弁護士の報酬に関する規定、および典型的な事案における弁護士費用をアンケートで集計したパンフレット。弁護士費用は現在自由化されているので、あくまで目安。

弁護士費用について - 弁護士ドットコム
弁護士費用の種類ごとの内容がわかります。上の日弁連のサイトにも種類ごとの記述はありますが、「時間制」という費目もありうることがふれられています。
| slapp | 法律よもやま話 | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
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