SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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そもそも表現とは社会的評価をめぐる何か (流対協セミナー報告)
先日、出版流通対策協議会(流対協)のセミナーを聴講したところ、大変得るものが多かったので、ご報告します。セミナーは、高額賠償請求の名誉毀損訴訟について、流対協の会員社が経験した裁判の事例を、当事者となった出版社社長とその代理人を務めた弁護士から話していただき、教訓を共有する集まりでした。

2005年1月、緑風出版が出版した『崩壊したごみリサイクル−御殿場RDF処理の実態』(米山昭良著)の記述が名誉毀損にあたるとして、元御殿場市長の男性が、執筆者と緑風出版を相手に、500万円の損害賠償を求めて静岡地裁に訴えました。この訴えが起こされたのは、この男性が市長復帰を目指して出馬した市長選挙の告示2日前のタイミングでした。ちなみに書籍の発行は2004年6月です。この市長選に男性は落選しますが、裁判は続き、2007年3月、原告の請求は棄却されました。その後、原告は東京高裁に控訴したものの、2007年5月に控訴を取り下げ、裁判は終結しています。

被告・緑風出版側は、原告の訴えは選挙目的の訴えであり、訴権の濫用にあたるとして門前払い的な却下を求めました。しかし静岡地裁の判決は、書籍の記述は名誉毀損に該当し、原告の社会的評価を低下させるとしたうえで、名誉毀損の違法性阻却事由を満たすために、原告の訴えを却下するという論旨の判示でした。

日本における現行の名誉毀損の法理[刑法230条]では、第一に当該表現が対象の社会的評価を下げるものかどうかが判断され、社会的評価を下げるものだとすると、名誉毀損(の違法行為)と認定され、そののちに、違法性を阻却する免責要件(公益性・真実性・真実相当性)が検討されて、最終的に違法な名誉毀損であるかどうかが判断されるという論旨をたどります。

セミナーでは、この論旨の構造そのものに疑問の声が多数あがりました。講師を務めた御殿場RDF裁判の弁護人・樋渡俊一氏は、こうした名誉毀損の条項のあり方そのものが、表現の自由を定めた憲法に違反しているとする説が研究者のなかにあることを教えてくれました。

また、2007年4月に彩流社が出版した『ルーシー事件−闇を食う人びと』(松垣透著)をめぐる報告がなされました。彩流社は、ルーシー事件に絡んで逮捕された被告から、同年5月、名誉毀損を理由に、出版物頒布禁止の仮処分を東京地裁に申し立てられ、さらに、2億円の損害賠償を求める裁判を同裁判所に起こされました。仮処分については地裁・高裁ともに原告の申し立てを棄却。裁判のほうは、2007年12月、東京地裁で原告の請求を棄却する判決が下されましたが、高裁に係属される模様だということです。

セミナーで印象に残ったのは、ある出席者が、そもそも表現とは、社会的評価や名誉をめぐるもの、いわば、社会的評価や名誉をめぐる闘争であって、社会的評価を下げるものだから“原則的に”許されないなどとされてしまう(現行の名誉毀損の)法律はおかしいのではないか、と発言したことです。特に文学や芸術は、何が真実かはわからないのであって、社会的評価を下げる記述だからダメとなってしまうのでは、表現が成り立たないといったことも指摘していました。報道とて、論評を含まなくても、取りあげ方で評価を含む表現を実現しようとするものであって、つくづく示唆深い発言でした。
| slapp | 法律よもやま話 | 18:49 | comments(0) | trackbacks(1) |
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