SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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裁判例を教えてください<(_ _)>
当ブログでは、この裁判はSLAPPにあたるのでは?この国には関連しそうなこんな法律がありますよ、といった情報を募集しています。SLAPPの概念の核となるのは、力のある勢力が公的に意義のある言動を封じ込める訴訟であることです。そういった裁判例をいろいろと知ることで、読者の方も見えてくるものがあると思います。ご協力をよろしくお願いします。

ただ当ブログは個別のケースに価値判断を加え、運動体のようになることを避けたいので、現在進行形のもの、一部分の認容もなく敗訴で確定しているものなどはSLAPPのカテゴリーではなく、興味深い裁判例とすることがあります。またお教えいただいても、上記のような理由でとりあげることができないこともあります。なにとぞご無礼をお許しください。

できれば以下のフォーマットのような体裁で、確認できるサイトや出版物など参照先とともに、お教えいただけるとありがたいです。情報をメールmuckrakeあっとmail.goo.ne.jp (あっとは変換してください)、もしくは掲示板SLAPP WATCH BBSにてお待ちしておりますm(__)m

*事件名もしくは事件番号
(原告) X
(被告) Y
(提訴日) ○年△月☐日
(理由) 名誉毀損による損害賠償
(請求金額・内容) ●●●●万円と謝罪広告
(一審) ○年△月☐日 Y勝訴 ×××万円賠償命令
(二審) ○年△月☐日
(三審) ○年△月☐日 
(内容) 事件の概要と争点、判示の理由など
| slapp | 当ブログから | 01:16 | comments(0) | trackbacks(128) |
メディアへの損害賠償請求の高額化(4)
司法研修所と東京地裁研究会が出した研究の結果は、両者とも損害賠償の平均基準をおよそ500万円としました。この算定基準が、のちのメディア訴訟において強い影響力を発揮するようになり、今に至っています。ただ、この500万円という額にとりたてて根拠があるわけではないことが、研究者には指摘されています。(「法律時報」74巻12号、松井修視氏論文)

こうして見てくると、メディア訴訟での損害賠償額の高額化は、社会の変化にともない、一定の必然性と権力の思惑とが一体となって生じている現象のようです。一方的におかしな現象とも言えないし、かといって、政治の動きには政府・与党や宗教団体の意向が見え隠れし、単純に歓迎すべきこととも思えません。権力の疑惑追及を萎縮させるような高額賠償判決が乱発されるのでは、息苦しい、ものも言えない社会になってしまいます。表現の自由への危険性が高いと警鐘を鳴らす声もありますが、実務家、特に弁護士からは慰謝料の高額化は積極的に評価されていますから、一般論で語るのは難しいところです。

今の日本は、先にみた議員らの発言にあったように、懲罰的損害賠償制度があるアメリカの司法動向を見習おうとしています。実はそのアメリカでは、損害賠償額の高さが、批判的言論を封じ込める武器として使われているのではないか、と指摘されるようになっています。アメリカでは懲罰的な賠償額だけでなく、いったん訴えられると弁護士費用だけで参ってしまうケースも多いのです。

その流れで問題化されたのが、言論を封じ込める武器としての恫喝訴訟、SLAPPです。アメリカでは、多くの州でアンチ・スラップの法制化が進められているように、不当な高額訴訟を抑止する方向にあります。アメリカの動向を参考にするなら、当然この点も参考にされるべきでしょう。

◇参考
文中言及した『創』、『法律時報』の記事
『何が週刊誌を凋落させたのか!?』 堀田貢得 大村書店
| slapp | 法律よもやま話 | 00:10 | comments(0) | trackbacks(154) |
メディアへの損害賠償請求の高額化(3)
週刊ポストvs清原判決が出たこの時期、不思議なもので、最高裁に設置されている司法研修所の研究会で、損害賠償のあり方についての研究が進められていました。この研究会に大きな影響を与えたといわれているのが、『判例タイムズ』(2001.5.15号)に掲載された論文「名誉毀損による損害賠償額の算定について」(塩崎勤・桐蔭横浜大学教授/弁護士(当時))です。塩崎氏は、名誉毀損訴訟で裁判所の認める損害額が低過ぎて名誉回復措置として十分に機能していないとし、名誉毀損の慰謝料算定の見直しを提言します。そのとき参照すべき例として、交通事故の死亡慰謝料の算定法を挙げ、500万円程度を平均基準額としたのです。

2001年5月16日、衆議院法務委員会で報道被害をめぐる議論がなされ、公明党の冬柴鐵三議員が、アメリカの懲罰的損害賠償制度に言及、その導入を促す発言を行ないます。アメリカのメディア訴訟で賠償が認められると、当時の平均で1500万円の賠償額となっているとも紹介し、参考人として出席していた最高裁長官に「損害額の認定の方向を示すべき」と求めました。しかも懲罰的賠償が導入されれば、一般的萎縮効果があるとし、高額賠償導入による抑止効果への期待を表明したのです。

そして法務委員会での議論の翌日、司法研修所は、平成一三年度損害賠償実務研究会の報告書のなかに「名誉毀損慰謝料額の定型化のための算定基準」というチャートを発表。2001年6月に出された「司法制度改革審議会最終意見書」も賠償額の低額さを問題視。2001年9月には、東京地裁の損害賠償訴訟研究会が「マスメディアによる名誉毀損訴訟の研究と提言」を出し、算定基準を明確にすることを提言しました。2002年2月にも大阪地裁の損害賠償実務研究会が同様の発表をしています。

2002年2月21日には衆議院予算委員会で、公明党の漆原良夫議員が賠償額の高額化をめぐて質疑、同3月14日には参議院予算委員会で、公明党の沢たまき議員が懲罰的損害賠償制度の導入を政府に求める質問を行っています。(ちなみに懲罰的損害賠償制度については、1997年に最高裁判所が、被害者に生じた損害をてん補する日本の司法原則になじまないと表明している)
| slapp | 法律よもやま話 | 23:49 | comments(0) | trackbacks(3) |
メディアへの損害賠償請求の高額化(2)
1998年前半までは、メディア関連の訴訟は賠償命令が出ても高額と呼べるようなものではなく、「100万円ルール」などと呼ばれ、賠償額が低めに抑えられていました。メディアの表現の自由への配慮が暗黙の内に浸透していて、メディアは特権的にふるまうことができたのです。

しかし1998年7月の参院選で自民党が議席を減らし、橋本政権(当時)が退陣したころ、状況が変化します。この直後、自民党は党内に「報道モニター制度」を創設。そして同年10月のメディア訴訟から200万円を超える損害賠償を認める判決が出るようになります。

翌1999年8月には、自民党の「報道と人権等のあり方に関する検討会」が、メディアの報道姿勢をめぐって報告書を発表。この報告書がその後続々と登場するメディア規制を含む法案提出の引き金になったと言われています。個人情報保護法、人権擁護法案、青少年有害環境対策基本法の三法がメディア規制の三点セットだと、大きな議論を巻き起こしました。

メディアへの損害賠償請求の高額化は、いわば第四のメディア規制のような威力を発揮しました。1998年には300万、1999年にも300万、2000年には385万と高額賠償判決が積み重ねられていきます。2001年3月、週刊ポストvs清原和博氏の裁判で小学館が敗訴し、1000万円の損害賠償が認められます(控訴審で600万円に減額)。この判決が、賠償額のハードルを一気に上げました。この損害賠償の高額化は国会でも話題になり、2001年3月21日、参議院予算委員会で、最高裁長官の代理者が、慰謝料算定のあり方に十分問題意識をもっており下級裁にも情報提供し積極的に対応している、と答弁しました。
| slapp | 法律よもやま話 | 23:48 | comments(0) | trackbacks(0) |
メディアへの損害賠償請求の高額化(1)
メディアによる報道が、名誉毀損やプライバシー侵害を侵していると、裁判を起こされることが多くなりました。アメリカでは、名誉毀損で刑事罰を与えられることはなく、民事訴訟のみで争われます。(月刊「創」2002年1・2月号の記事中、堀部政男氏の発言より) 日本では、刑法で名誉毀損罪が定められており、起訴されることは稀なものの、言論への抑止効果をあることは確かです。さらにもちろんのこと、民事訴訟で名誉毀損が争われます。自由な言論を重んじる気運が希薄なうえに、近年、民事訴訟での賠償額が高額化しているのです。この背景事情を確認しておきたいと思います。

まず指摘できるのは、メディアがただ単に表現の担い手であるということだけを理由に特権的にふるまうことができなくなってきた情報環境の成熟です。かつては情報をマス(多数)に対して流通させるメディア(マスコミ)は、民主社会の成立に貢献する不可欠な特別な存在とみなされていました。再販制度によって守られた本や雑誌、新聞。電波を占有する免許事業の放送。メディアの存在そのものが優遇されるのにも一理あったのです。

しかし時代とともに情報流通の手段は多様化し、メディアの独自性は相対的に低下します。これまで一方的な情報の受け手と思われていた側が、発信する回路を獲得し始めます。そしてメディアも、一企業市民として責任ある行動が求められるようになってきました。メディアによる報道被害や性的情報の氾濫が問題視されるようになったのです。メディア不信はメディアの相対的地位の低下に拍車をかけました。

メディアの相対的地位の低下とは、情報発信する主体のフラット化現象です。実はこの情報環境のフラット化の影響を受けたのは、メディアよりも政治権力のほうが先んじていました。メディア・ポリティックスと呼ばれるように、政治も情報環境の中の一部となり、相対的な影響力を低下させてきたのです。当然、そういった状況に対し、政治の側からは反作用が生まれます。近年の政治によるメディア規制の流れと損害賠償の高額化は期を一にして起きてきました。
| slapp | 法律よもやま話 | 23:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
カリフォルニアのアンチ・スラップ法(9)
(e)却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バックに反対する側は、必要とする証拠開示手続きを得るため、(審議)継続への一方的な申し立てを提起してよい。その動議に反対するのが正当であると根拠を示すのに不可欠な事実が存在するようであるならば、その時点で明確に存在すると言えないとしても、裁判所は、反対者に、宣誓供述書を得て、証拠開示手続きを行い、その他一切の正当であると示すための進行手続きを許可することで、合理的な(審議)継続を認める。

(f)もし裁判所が、却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バックはばかげたものであり、単に不必要な遅延を意図していると認識したならば、裁判所は、裁判費用と相当額の弁護士費用とを、128.5.項に従って、その動議において優勢となった原告に(賠償金として)与える。

(g)却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バックを拒否する命令の発動、もしくは、スラップ・バックの主張を抑え込む訴えといわれるような訴因のすべてではないにしてもいくつかに関する特別動議を承認するならば、被害者側は、その決定が書面で出されて20日以内に、法廷での(召喚)令状に基づく、適切な裁判の再検討を願い出てよい。

(h)却下の特別動議は、そのスラップ・バックが法的にみて違法であったような従前からの訴因の訴えや主張をする側によるスラップ・バックに対しては、提起されない。

(i)本項は、公的な団体によるスラップ・バックの訴えには適用されない。

以上、翻訳したものは2005年10月5日施行されたもの。
◇参考
California Code of Civil Procedure Sec. 425.18.
| slapp | アメリカの反SLAPP法 | 12:27 | comments(0) | trackbacks(37) |
カリフォルニアのアンチ・スラップ法(8)
(c)425.16項の細目(c)、(f)、(g)、(i)および904.1項の細目(a)の13節の規定は、却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バックには適用されない。

(d)(1)却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バックは、以下に定めるような期間のうちのいずれかの時点で提起される。
(A)訴えの提起から120日以内。
(B)裁判所の裁量次第で、訴えの提起から6ヶ月以内。
(C)裁判所の裁量次第で、被告に過失がなく、裁判所が特殊事情と環境にあると文書で言明した特殊な事例は、いかなる後の時点でもよい。

(2)その動議は、裁判所の(未決の)訴訟案件の状況が後の尋問を必要としていないならば、その動議の提出から30日を超えないうちに、裁判所の事務官によって、尋問の日が設定される。

(つづく)
(注)今回訳した部分で(c)“A special motion to strike a SLAPPback ”がひとつの語句を成しているような場合、この語句を“スラップ・バックを却下する特別動議”と解釈すべきなのか、それとも、“却下の特別動議(その一形態としての)スラップ・バック”と解釈すべきなのか、はっきりわかっていません。本項では後の(d)(e)(f)(g)でも出てきます。文法上は前者の解釈も成立すると思われますが、後者のように解釈したほうが、条文全体の意味が通る気がするのです。スラップ・リソース・センターの解説を読むと、スラップ・バックはSLAPPを被った側が対抗措置として起こす反対訴訟を意味しているはずであり、本項はそのことについて定めた条項だと思われます。なので、後者の解釈のように“ special motion to strike”と“SLAPPback”の関係は、スラップ・バックに重心がおかれ、前者が後者を形容するような表現であると、暫定的に解釈しています。よって、以後その方向で訳してみましたが、文法上の関係が必ずしも説明できません。はっきりした解釈がわかる方は、ご教示いただければ幸いです。法律ということもあって逐語訳に努めていますが、現訳は参考程度のものとご理解を。
◇参考
California Code of Civil Procedure Sec. 425.18.
| slapp | アメリカの反SLAPP法 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(2) |
カリフォルニアのアンチ・スラップ法(7)
■カリフォルニア民事訴訟法 
Sec415.18. スラップ・バック

(a)議会は、スッラプ・バックは、一般的な悪意のある行為の遂行とはその性格も由来も区別できると、確認し言明する。さらに議会は、スラップ・バックは、本項が規定するように、一般的な悪意ある提訴とは異なる取り扱いをされるべきであると、確認し言明する。なぜなら、スラップ・バックはSLAPP(公けに関与することに対する戦略的訴訟)訴訟への抑止効果と参加型民主主義への公衆の信頼回復をもたらすことにより、憲法上の言論の自由の権利と請願権の正当な行使を護ろうとする議会の意志するところと首尾一貫しているからである。

(b)本項の目的に沿い、次の用語は、以下のような意味を指す。
(1)スラップ・バックは、悪意のある提訴及び425.16.項による却下の特別動議に従って退けられる前の訴因の訴えや主張にもとづく(法的)手続きの濫用に対する、すべての訴訟上の行為を意味する。
(2)却下の特別動議は、425.16.項に従ってなされる動議を意味する。

(つづく)
◇参考
California Code of Civil Procedure Sec. 425.18.
| slapp | アメリカの反SLAPP法 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(1) |
カリフォルニアのアンチ・スラップ法(6)
(d)細目(b)と(c)は次のような場合にも一切適用されない。
(1)カリフォルニア憲法第1条の2項、あるいは証拠規定の1070項の細目(b)に挙げられている人物、もしくは公衆に対して伝達する情報の収集、受信、加工に携わる一方で、意見の宣伝をしたり本や学術誌で発表したりすることに携わっている人物。

(2)あらゆる演劇的、文学的、音楽的、政治的、芸術的な−それは限定されるわけではないが次のようなもの、映画やテレビ番組、一般に流通する新聞・雑誌に掲載された記事を含む−活動の、創造、宣伝、展示、(個別具体的な)広告、その他同様の販売促進に携わっている人や実体に対して起こされた訴訟。

(3)連邦、州といった地方政府の補助、賞金、プログラム、役務提供への償還により年度収入の5割以上を得ている非営利組織。

(e)もし予審法廷が、その訴訟や訴因が本項に従って免除されることを根拠に、却下の特別動議を否定したならば、425.16項の細目(j)と904.1項の細目(a)の13節の上訴規定は、その訴訟や訴因には適用されない。

以上、翻訳したものは2004年1月1日施行されたもの。
◇参考
California Code of Civil Procedure s. 425.17
| slapp | アメリカの反SLAPP法 | 15:01 | comments(0) | trackbacks(20) |
カリフォルニアのアンチ・スラップ法(5)
(c)425.16項は、主に商品やサービスの販売や賃貸借のビジネスに従事する人−それは、限定されるわけではないが次のようなもの、保険業、証券業、金融商品販売業を含む−に対して起こされた訴訟で、以下のような条件が両者ともに存在するならば、そのような人による声明や行為に由来する訴訟には、一切適用されない。

(1) その声明や行為が、当事者やビジネスの競合者によるビジネス上の活動や商品・サービスに関する事実の代理的表現、−当事者による商品やサービスそのもの、もしくは当事者の商品・サービスを供給する過程でなされた声明や行為に対する、認知を獲得する目的でなされたり、それらの宣伝、販売、賃貸借を確保し、商取引を行おうとする目的でなされている−から成るものである(場合)。

(2) その(動議の)意図する聴衆が、現実のあるいは潜在的な買い主や顧客であったり、さもなければ現実のあるいは潜在的な買い主や顧客に対して、もしくは通常の認知獲得の過程やその進行、調査といったことに総じて由来する声明や行為に対して、そのような言動(statement)を繰り返しているような人であったり、影響を与えることを目的としている人である(場合)。ただし、その声明や行為が、カリフォルニア公益事業委員会にまで持ち出される途上の電話会社によるものであったときか、競合相手によって起こされた訴訟であるときは、その声明や行為が重要な公的問題であったとしても、その限りではない。

(つづく)
◇参考
California Code of Civil Procedure s. 425.17
| slapp | アメリカの反SLAPP法 | 23:59 | comments(0) | trackbacks(17) |
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