SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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サンデープロジェクト・コメント名誉毀損訴訟日程
今年5月17日、安倍晋三首相の秘書ら3人が、朝日新聞編集委員の山田厚史氏と朝日新聞社を相手に、氏がテレビ朝日の「サンデープロジェクト」で日興コーディアル証券の不正会計問題についてコメントした内容をめぐって名誉毀損で訴えた裁判があったのは、ご記憶の方も多いと思います。この裁判の日程がわかりましたのでお知らせします。この裁判に先立つ週刊朝日のケースは、朝日側の謝罪があったうえで提訴されており、ある程度結論がみえている部分もあって(もちろん提訴が妥当かどうかは別ですが)、他メディアも野次馬的に続報しやすいかもしれません。しかしシロクロ決していないこの裁判は、報道すること自体で、受け手に政治的な立場を勘ぐられたりする可能性があり、他メディアが黙殺にむかうことが危惧されます。注意して見守るべき裁判だと当ブログは考えます。

裁判は今週、6月29日、午後1時10分、東京地裁705号法廷にて開かれ、山田氏が被告人として意見陳述を行います。

◇追加の解説
裁判は、「サンデープロジェクト」(3月25日放送)において、日興コーディアル上場維持の決定が議論になった際、山田氏が、「日興證券には安倍事務所にすごく強い常務がおられて、その人が今度これをやって将来社長だなんていう噂がね、ありますよ」と発言したことを安倍氏の秘書ら3人が問題視。秘書らは、「安倍事務所に影響力のある日興證券の常務が同事務所の秘書らに働きかけて、本来日興コーディアル證券は上場廃止になるべき事案であったにもかかわらず、同事務所の秘書らによって上場廃止が防がれた」との印象を山田氏らが一般視聴者に与え、その社会的評価を下げた、と主張。朝日新聞社に対しては、山田氏に編集委員としてテレビでの発言を許した「使用者責任」があるとして訴訟対象に含めた。請求内容は、損害賠償・計3300万円と謝罪広告。
| slapp | 興味深い裁判例 | 20:47 | comments(0) | trackbacks(64) |
AIGスター生命損害賠償裁判(名誉毀損訴訟)
企業による自社に批判的な表現行為の封じ込めは、しばしばみられることかもしれません。ただ労働争議の過程で、会社と労働者側が対立した意見の応酬のレベルを超えて、裁判となった例がありました。企業そのものが社会的存在である以上、労働争議の片方が自らの主張を社会に訴えても、一概におかしいとは言えないでしょう。労働争議におけるSLAPPは、当然のように会社側敗訴で確定しています。

*AIGスター生命損害賠償裁判
(原告) AIGスター生命
(被告) 銀行産業労働組合
(提訴) 2004年4月16日
(理由)名誉毀損による損害賠償
(請求金額) 慰謝料500万円+全国紙への謝罪広告
(一審 東京地裁) 2005年3月28日 被告勝訴
(二審 東京高裁) 2005年9月28日 被告勝訴 のち確定

(内容)AIGスター生命にて、正社員と同様の勤務実態で長年働いていた4人の女性嘱託事務員が、担当部署の移転という会社都合で一方的に雇い止めされたのは不当として、銀行産業労働組合(銀産労)に加入し、会社側と交渉を行うこととなった。労働争議をすすめるなかで、銀産労は情宣活動として、ビラの配布を行った。これに対しAIGスター生命は、信用・名誉を毀損されたとし、損害賠償請求訴訟を起こした。最終的に労組側勝訴で確定した東京高裁判決は、「銀産労のビラ配布は、正当な組合活動の範囲内」と認めた。 ちなみに本体の労働争議は、東京都労働委員会や中央労働委員会で、AIGスター生命側の不誠実な団体交渉態度が不当労働行為にあたるとする判断が出されたものの、現在も争議中の模様。

◇参考
AIGスター生命労働争議
AIGスター生命|労働争議特設サイト
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 23:53 | comments(0) | trackbacks(64) |
オリコン訴訟リンク集(7)第三回口頭弁論
12日に開かれたオリコン訴訟に関連したニュースのリンク集です。オリコン訴訟の第4回口頭弁論期日は、7月31日、午後3時、東京地裁709号法廷と決まりました。「日経会社情報」の編集長によるオリコンについてのコラムを引用した烏賀陽の文章のアドレスも紹介します。研究室兼資料室サイトとしてSLAPP情報募集中♪

⊡メディア・「オリコン裁判」 取材ノート提出へ
http://www.janjan.jp/media/0706/0706127170/1.php
⊡オリコン訴訟の第3回公判!烏賀陽氏が勝訴の手応えを語る
http://news.livedoor.com/article/detail/3196549/
⊡オリコン訴訟第3回口頭弁論〜オリコンの主張破綻へ
http://www.labornetjp.org/news/2007/1181655314685staff01
⊡オリコンうがや訴訟6アムウェイ、武富士、2ちゃん・・・裁判件数26の山岡氏「ひるむな、記事を書け!」
http://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=685
⊡日経、オリコンを「こうした不可解な訴訟も投資家の評価を下げる」と論評
http://ugaya.com/column/070608nikkeisuppli.html
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 18:26 | comments(0) | trackbacks(48) |
スラップ・バスターズ
20070612

12日のオリコン訴訟第三回口頭弁論は、10分もかからず終了。まもなくウェブ系ニュースサイトでの報道があるでしょう。写真はオリコン訴訟にとりくむ弁護士の方々、(当ブログが勝手に)名づけて、スラップ・バスターズ(slapp busters)の皆さんを含めた今日の様子です。右から、松本はるか弁護士、草道倫武弁護士、三上理弁護士、そして烏賀陽弘道。弁護団にはもう一人、釜井英法弁護士がいます。若い松本弁護士以外は、対武富士裁判の弁護の経験者です。

追記:
「予約枚数もカウント」 烏賀陽氏、取材ノートのコピーを提出 - OhmyNews
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070612/12071


| slapp | 日本のSLAPP実例 | 13:55 | comments(1) | trackbacks(16) |
被取材者の「真意」と、取材者の「底意」
記事であれ、裁判であれ、行為には表現者の意図がはたらいています。表現を目にした第三者は、その意図を読み取る力が必要でしょう。 ジャーナリスト・柳原滋雄氏のコラム日記の6月8日分に、興味深い裁判例が紹介されていました。かなりの部分、孫引きになりますが、書き留めておきたいと思います。誰もが表現者となることができ、いつなんどき取材される側に立たされるかわからない今の時代、さまざまな意味で興味深い事例です。

ニュースキャスター・筑紫哲也氏の妻、房子氏が、プライベートな夫婦の買い物の光景を隠し撮りされ「週刊新潮」に掲載されたのは、プライバシーの侵害にあたるとして、新潮社を訴えていた裁判の判決が、5月23日、東京地裁であり、新潮社に150万円の損害賠償を命じる判決がでたようです。

筑紫哲也氏は、以前から「週刊新潮」とはトラブルになっており、裁判となった記事の掲載にあたっての同誌編集部からの取材依頼に対しては、以下のような回答をしたそうです。

「平成16年10月22日付で荻原様宛に送った文書にも記した通り、貴誌の記事が、一定の予見、『底意』に基づいて書かれるだろう事は容易に予想され、当方がどう答えようとも真意が反映されるとは到底思えず、『一応相手の言い分は取材した』というアリバイ作りの具となることは明らかだからです。これもまた前回の文書に記したことですが、事実に基づかない中傷や私及び関係者の人格に対するいわれのない攻撃については、しかるべき対抗措置を取るつもりです」
| slapp | 法律よもやま話 | 01:03 | comments(0) | trackbacks(8) |
オリコン訴訟リンク集(6) SLAPPの視点
オリコン訴訟の第3回口頭弁論期日は、ちょうど一週間後、6月12日、午前11時、東京地裁709号廷です。

オリコン訴訟をSLAPPの視点からフォローした記事で、前回(5)で挙げたもの以外をブログを含め集めてみます。現在、日本外国特派員協会のウェブサイトでは、外国人の記者の方がオリコン訴訟について書いた記事が翻訳され、トップページに特別にリンクされています。一部は機械翻訳なのか、翻訳にやや難があるのはご愛嬌。外国人の記者の方が、オリコン訴訟は日本社会で重大な意味をもっている、と受けとめているのがわかります。

⊡SLAPPについて - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2007/01/slapp_ee94.html
⊡newsmemo@sarutoru オリコン個人提訴裁判を反スラップ法理の切り口でみる
http://d.hatena.ne.jp/sarutoru/20070121/p1
⊡ジャーナリスト個人を対象にした高額訴訟の不当性 −−反SLAPPの論理
インターネット哲学【ネット社会の謎を解く】( 諸野脇 正 )
http://www.irev.org/shakai/oricon1.htm
⊡「SLAPP」としてのオリコン訴訟」みずもり亭Blog @ journalism.jp
http://www.journalism.jp/kayukawa/2007/02/slapp.html
「Answers.com」による用語解説の翻訳、以後も関連記事あり

⊡Japon : un reporter au tribunal pour crime de lèse-top 50
http://www.liberation.fr/actualite/medias/235589.FR.php
トップ50不敬罪で記者裁判(ミシェル・テマン)[上記記事の翻訳]
⊡Oricon Sues Writer for Reported Comments
http://www.fccj.or.jp/~fccjyod2/node/2008
某記者の記事のことで起訴オリコンが起訴(ボブ・ティルニイ発)
⊡Enjoy the Silence
http://www.fccj.or.jp/~fccjyod2/node/2052
沈黙を楽しみなさい(デイヴィッド・マクニール発)
| slapp | 日本のSLAPP実例 | 15:56 | comments(0) | trackbacks(63) |
弁護士の責任(2)
来年4月から監査の充実と内部統制を目的とした日本版SOX法が適用されることもあって、社会の法令遵守への意識は高まっており、公認会計士は倫理的高潔さが一層求められるようになっています。会計士二人が逮捕されたライブドア事件では、刑事責任を問われなかった会計士が、道義的責任から会計士業を廃業したという例がありました。会計士の場合は、まともな監査を行わないと、対象企業が市場から退場を余儀なくされ、自らの持続的活動も危うくなるわけです。

しかし、弁護士の場合は、企業の営業上の浮沈と関わりなく業務に携わることが、比較的可能です。しかも企業の営業姿勢や企業文化と関係なく、特定の法的分野の専門家として業務に携わることが可能なのです。弁護士には業界の規範として職務基本規定が存在しますが、職務の自由と独立の尊重を謳うことに重点があり、逆の面からみれば、規律なき弁護活動が可能になっているともいえます。

法曹人口は増員される途上にあり、これからは弁護士相互が暗黙の了解としていたような職業倫理が失われていくのは必至で、今後いっそう法曹倫理の分野が重要となるでしょう。先に触れた、ライブドア事件をきっかけに会計士資格を返上した田中慎一氏の著作には、「子どもたちに胸をはって言えない仕事なら、始めからやらないほうがいい」と職業倫理を語るくだりがあります。劣悪な企業文化をもつ企業が、社会で勢力を伸してくる過程では、必ずそれを正当化し支援する顧問弁護士らがいます。そういった弁護士らに噛みしめてもらいたい言葉です。

こうした心がけと同時に、弁護士がビジネスとして訴訟に励むのに歯止めをかける制度的環境が必要となりましょう。将来は企業の顧問弁護士となった者に、企業の法令遵守の責任を担わせる制度があってもいいかもしれません。法令遵守の品質管理がはかられることは、企業内で働く者にとっても、望ましいのではないでしょうか。

◇参考
弁護士職務規定(日本弁護士連合会)
公認会計士倫理規則(日本会計士協会)
公認会計士・監査法人制度の充実について(金融審議会公認会計士制度部会)
『ライブドア監査人の告白』 田中慎一 (ダイヤモンド社)
『プロブレムブック法曹の倫理と責任[第二版]』 塚原英治ら編著 (現代人文社)
| slapp | 法律よもやま話 | 16:19 | comments(0) | trackbacks(32) |
弁護士の責任(1)
SLAPPを考えるうえで避けて通れない問題が、不当訴訟を起こしたと目される企業や集団の代理人を務める弁護士の責任の問題です。刑事であれ民事であれ、訴訟で当事者を法的に支援する弁護士の存在は、あってしかるべきですが、彼らは訴訟における責任をどの程度負っているものなのでしょうか。

これまでいくつか海外のSLAPP実例をとりあげてきましたが、事例を探すため英語圏の報道に接していて気づいたのは、訴訟における弁護士の存在感の大きさです。訴訟に関する会見が開かれたりする場合、弁護士が当事者よりも前面に出て発言することがありますが、英語圏の記事では、一つひとつの発言の責任を明示するかのように、「弁護士○○は述べた」と逐一記述されるのが印象的です。たとえ当事者の発言があっても、弁護士と明示された発言のほうが、報道の大部分を占めていたりします。

弁護士が訴訟の代理人として企業活動に関与すると、企業活動の当事者として、責任の一端を負うことになると考えていいのかもしれません。例えばこの例(SLAPPに大制裁が加えられるアメリカ)で紹介したように、SLAPPを起こした土地開発業者の弁護士が、反訴で懲罰的罰金を課された事例があります。弁護士は、訴訟の対象となり、濫訴の責任をとらされているのです。弁護士も、訴訟の責任を担い、その企業活動の(倫理的)意味合いを背負いこんでいるわけです。

法律家の職業倫理は法曹倫理と呼ばれ、学問の一分野となっています。弁護士の場合、守秘義務や依頼者間の利益相反といった課題のほか、不当提訴への関与も倫理的葛藤を引き起こすテーマとして考察されています。

ところで、弁護士と同じく職業倫理が厳しく問われる仕事として公認会計士があります。顧客である企業から報酬を得ながら会計監査を行うので、業務がお手盛りになるではないかとの批判がありますが、独立性を保持するため、特定の関係先から継続的に大部分の収入を得ないようにするといった業界の倫理規定が定められています。もちろん財務諸表の虚偽記載を認めてしまったような場合には、違法行為として責任を問われるのは言うまでもありません。(つづく)
| slapp | 法律よもやま話 | 16:13 | comments(0) | trackbacks(8) |
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