SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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新銀行東京、メディアに登場した告発者のみを提訴
オリコン訴訟に似て、メディアに登場した情報提供者のみを訴える裁判を、新銀行東京が起こしたと報じられています。しかも銀行経営の実態を告発する証言をした情報提供者が、銀行の社会的評価や信用を低下させたという主張だけでなく、機密情報をメディアに漏洩したという点も訴えの論点としているようです。

新銀行東京が元行員を提訴 テレビ、雑誌に「漏えい」(08/30 22:43)(北海道新聞)
 新銀行東京の男性元行員がテレビ番組や週刊誌で機密情報にかかわる発言などをし、守秘義務に違反したとして、新銀行が元行員に情報漏えいの禁止や1320万円の賠償などを求め、東京地裁に提訴したことが30日、分かった。
 元行員は「取材に応じたのは、都民がいかに新銀行で損害を被るか分かってもらう公益のためであり、わたしが受けた不当な扱いを知ってもらうため。訴訟は言論の弾圧だ」と反論している。
 元行員に届いた訴状によると、新銀行側は元行員が2005年4月、銀行に機密の保持や機密資料の返還義務について誓約書を提出したと主張。元行員が退職後の今年6−7月に、テレビ番組に出演して機密情報に当たる会議内容を記録した資料を示したほか、複数の週刊誌に機密情報を伝達したとして、「新銀行の社会的評価や信用が著しく低下した」と損害賠償や機密にかかわる文書、電子記録の返還を求めている。

テレビ番組については、6月8日に放送されたサンデー・プロジェクトです。3月28に物議をかもした400億円の追加出資が決まってしまったことに対して、義憤を感じていた元行員が決意の告発をするという内容の番組だったと記憶しています。

番組や記事を作成したテレビ局や週刊誌の発行社は、訴えの対象外とする根拠はなんでしょうか。テレビ局や発行社は、告発者の証言をもとにして作成した情報を、編集し頒布することにかかわっているのに訴外とすることは、そこに戦略的判断が働いていると、外形的にみえます。

ちなみにWikipediaの公益通報者保護法の項目を見ると、労働基準法上の労働者しか保護しないといったことが書かれていて、その適用対象の狭さに驚きます(社会には労基法上の労働者でない人は沢山います)。

もしもこの場合、守秘義務によって守られるべき利益と秘密の開示によってもたらされる公益性のどちらが重いのかを判断するといった議論に入らず、公益通報者としての法理が援用されず、ただただ守秘義務違反の秘密漏えい者として裁かれるといったことはありうるのでしょうか。経営情報の開示がCSRとして求められている時代なのですが、新銀行東京のHPには、この件に関して、これといった情報は掲載されていません。
| slapp | 興味深い裁判例 | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
「押し紙」問題イベント前日分告知
というわけで、読売新聞側から著作権侵害と名誉毀損で訴えられている黒薮哲哉氏の報告会と裁判があります。直近の紹介で申し訳ありません。SLAPPの切り口から関心をもつだけでなく、新聞業界の内幕を知るよい機会だと思います。以下、いただいた案内から抜。

まず8月31日(日)。
当日は会場で、弁護団が制作した「押し紙」排除のためのパンフレットを無料配布します。

会場:板橋文化会館・グリーンホール 504号室
日時:8月31日、5時40分〜8時 
タイトル:真村裁判とその後の対読売訴訟
 出演:江上武幸弁護士
   真村久三(真村裁判の原告、読売と係争中)
   平山春雄 (YC久留米文化センター前事件の原告、読売と係争中)
司会:黒薮哲哉(著作権裁判と名誉毀損裁判の被告)
 
真村裁判が完全勝利してから今日までの八ヶ月の動きを検証します。今、福岡のYCで何が起こっているのかを報告します。質疑応答の時間も十分にあります。

最寄り駅は、東武東上線の大山駅(池袋から三つ目)です。
地図:板橋区立グリーンホール


つぎに9月1日。
読売新聞西部本社の江崎撤志氏が黒薮氏を訴えた著作権裁判
東京地裁の623号法廷で10時30分から
裁判の後、15分程度のミーティング

さて、新聞業界のタブーである押し紙の問題を黒藪氏は追及してきたわけですが、この問題も先のエントリーで書いたのに似て、内輪の業界紙では話題になっていますが、新聞の紙面がとりあげることはありません。例えば、新聞通信調査会報という通信社が母体となった財団の業界紙の平成20年2月1日号には、元早稲田大学客員教授の藤田博司氏が、『最悪の「偽」と「選択」』という一文を寄せ、黒薮氏の著書に言及し、「押し紙」の事実を認めた裁判(上記イベント案内に出てくる真村裁判)を紹介して、発行部数の数字に意図的なごまかしがあることが裏付けられれば、今後新聞の信用は取り返しのつかない痛撃を受ける、と新聞界の対応が急務であると訴えています。しかしその文章とて、藤田氏が共同通信という通信社出身者であるからこそ書くことのできた文章であろうと、当ブログは推測しています。
| slapp | 未分類 | 18:36 | comments(0) | trackbacks(1) |
☆無★
更新ヲ復活シマス。当ブログにとってSLAPPという切り口で高額請求訴訟の増加という社会現象を読み解くことに意義があるという思いに変わりはありません。米国のように、そういう現象を違法だと認定する法的枠組みまで整備している国が現に存在するのですから、そこには考察すべき価値があるはずです。

しかしこの切り口を、日本においては既存の大手メディアが黙殺することもまた、どうやら確実のようです。予想がはずれるなら嬉しい誤算ですが、彼らはメディア産業のサラリーマンであり、自らの立場を守ろうとする限り、構造的に考えて、この問題に言及できないように見えます。これまでマスコミと呼びうる紙媒体でSLAPPという切り口をとりあげたのは、毎日新聞と週刊ダイヤモンド、あとはサイゾーぐらいですが、いずれもとりあげた理由が、それなりに理解できる媒体かと思います。

言論・表現の自由といったテーマに敏感であってしかるべきメディアに従事している人間が、このテーマに反応しない、否、できないことに、さすがに空しさを感じます。例えば、朝日新聞はかなり以前に社内の労働組合報で当ブログを引用しながら、SLAPPとよばれる社会現象があることを考察していたことがあります。しかしこれといって、紙面に反映された形跡はありません。そういうふうにメディア関係者は、内部的に問題意識をもつことはあっても、公(おおやけ)には、書かないことがしばしばです。当ブログとしては、そういう事実は知られるべきことだと思って今、書きました。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ・・・って世の中をつくっているのは、たいてい自分自身でもあるのですね。

ウェブ上で情報を追っている人々は、このテーマに関心をもっているようです。前回のエントリーでお知らせしたJCJ(日本ジャーナリスト会議)出版部会+出版労連の開催したシンポジウムをレポートしたJANJANの記事は、はてなブックマークを沢山集めていました。クローズドのブックマークが多いことは意味深です。

「表現の自由」と高額訴訟−フリージャーナリストへの「口封じ」攻撃−JanJanニュース

現時点で記事のコメント欄を見ると、アメリカでは訴訟を提起するにあたって、裁判所へ支払う印紙代相当のお金が請求額に左右されないという趣旨のコメントがあります。これは事実かどうか、何かご存知の方は教えていただけると幸いです。

さて、上掲のシンポジウム(田島泰彦、斎藤貴男、黒薮哲哉、烏賀陽弘道が各パネリスト)で、JANJANの記事にでていない点で印象に残ったのは、スウェーデンには報道評議会というメディアが自主的に運営する仕組みがあって、裁判の前段階的なものとして機能していて、スウェーデンでは名誉毀損の裁判がほとんどないと言われている、という話(田島氏談)が聞けたことでした。日本では、放送界にBPO(放送倫理・番組向上機構)、出版界に雑誌人権ボックスという苦情処理機関がありますが、存在感があるとは言えず、メディア全体をカバーする自主的苦情処理機関もないのが現状です。メディア産業全体をカバーする自主的規制機関は成立しうるのか、そもそも成立するのが望ましいのか、正直言ってわかりませんが、そういう仕組みがある国もあるということです。
| slapp | 未分類 | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
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