SLAPP WATCH

大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるため起こす高額の恫喝的訴訟をSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)といいます。このブログはSLAPPについての国内外の実例や法律を集め、情報を蓄積し公開する研究室兼資料室です。反対運動のサイトではありません。基本的に♪
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堀江貴文vs立花隆・日経BP裁判、地裁判決その後
10月3日に以前お伝えした堀江貴文氏が立花隆氏と日経BP社を訴えている裁判の地裁判決があり、堀江氏側が勝訴し、賠償として総額200万円の支払いを認める判決が出ました。各メディアが報じていますが、判決が出てから一斉に報じる姿勢には、発表ジャーナリズムの一類型としての、判決ジャーナリズムという言葉を充てたくなります。それはともかく、以下に共同通信の記事を引用します。

立花隆さんらに賠償命令 堀江被告の名誉棄損訴訟
 暴力団との関係をほのめかす記事で名誉を傷つけられたとして、ライブドア元社長堀江貴文被告(35)=証券取引法違反罪で公判中=が、評論家の立花隆さんと記事をサイト上に掲載した日経BP社(東京)に5000万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、立花さんらに200万円の支払いを命じた。
 笠井勝彦裁判長は判決理由で「疑惑と記事内容との関係は明らかでない。一般人が読めば、堀江被告が暴力団と密接な関係を持ちマネーロンダリングに加担したと解釈できる」と指摘。
 その上で、サイトへのアクセスが多数あった点などを重視、「名誉棄損の違法性は低くなく、被告の精神的苦痛は看過できない」と結論付けた。
 判決によると、BP社は2006年5月10日、「堀江被告の保釈・幕引きで闇に消えたライブドア事件」と題する立花さんの記事をサイトに掲載した。
(後略)
堀江氏は判決後当日には、ブログで勝訴について言及しました。そのなかで、今後も名誉毀損にあたる記事などを精査し、なんらかの対処をとる可能性があることを示唆しています。立花氏と日経BP社は、ウェブ上ではこの件について、なんら情報を発信していないようです。

レモンチェロ|六本木で働いていた元社長のアメブロ
今後も、こういった根拠のない誹謗中傷系の報道・記事に対しては徹底的に対処していく予定です。これまでに報道されたものも、洗いなおす予定です。
ところで、もともと立花氏が、問題となった記事のネタ元として活用したのは、二階堂ドットコムというサイトの管理人が発行した『ライブドアとの闘いの日々』(スポーツサポートシステム発行、文苑堂発売)という本でした。その本を引用しつつ考察した記述が問題となったのですが、堀江氏側は二階堂ドットコムの管理人に対しては訴えませんでした。いわばネタ元となった情報の発信者は訴えず、それをもとに考察、頒布した立花氏だけを訴えたのです。判決後、二階堂ドットコムは裁判についてコメントしています。

nikaidou.com: 堀江貴文vs立花隆裁判について
当方は本件裁判の元となった件に関し、完全に戦える自信がある。堀江側がどうして当方を訴えてこなかったのかといえば、それは「泥」だったからではなく、当方こそがライブドア事件の闇にあった真相を知りつくしているからである。・・・なのでもし、堀江側が当方を訴えてくれば、いつでも書類と証言者を用意し訴訟に応じ、反訴も辞さない。というか反訴するだろう。・・・(一部を抜粋)
率直に言って、意味ありげなほのめかしで終わっている文章なので、事の真相はわかりませんが、堀江氏が二階堂ドットコムに対して、いかなる見解をもっているのか気になるところです。堀江氏の論法でいくなら二階堂ドットコムの管理人も訴えなければならないからです。

本エントリーの趣旨とは別のアイデアですが、虚偽報道や訂正報道を集積したデータベースのようなものがあれば、情報発信者の信頼性を第三者が判断するときの参照点になりえますね。

追記:web.archive.orgに削除された当該記事がクロールされています
| slapp | 興味深い裁判例 | 21:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
パシコン・荒木民生vs財界展望新社・山岡俊介、訴訟終結
ジャーナリスト・山岡俊介氏の運営するサイト、アクセスジャーナルの20日付のエントリーによると、建設コンサルタント企業・パシフィックコンサルタンツグループ(通称パシコン)元会長・荒木民夫氏との間で訴訟が続いていた裁判が、山岡氏側の勝訴で終結したと報告されています。3月に高裁で山岡氏側が勝訴していた判決が確定したということになります。リンク先はリード文が読めるサイトです。

情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ): パシコン・荒木民生被告の上告棄却で、本紙・山岡等の勝訴確定

追記:9月18日付の共同配信記事などが、上記裁判の終結を伝えていました。
PCI元社長が敗訴 名誉棄損で提訴の違法確定 【共同通信】
大手建設コンサルタント「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)の元社長荒木民生被告(72)に関する月刊誌「財界展望」の記事が名誉棄損に当たるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は18日、荒木被告の上告を退ける決定をした。
 発行元の財界展望新社(東京)などに2000万円の賠償を求めた荒木被告の請求を棄却する一方、「表現活動を妨害する違法な提訴」と反訴した財界展望新社側の主張を認め、計120万円の賠償を荒木被告に命じた2審東京高裁判決が確定した。
 (後略)
| slapp | 興味深い裁判例 | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
新銀行東京に訴えられた元行員内部告発者が逆提訴
東京都の1000億円の出資で設立されたものの3年ほどで経営危機に陥り、今年さらに400億円もの追加出資を仰ぐことによって営業を存続することになった新銀行東京が、メディアに実名・顔出しで登場して内部告発を行った男性を、情報漏えいの禁止や損害賠償として1320万円の支払いを求めて訴えたことは、すでに当ブログでも紹介しました(新銀行東京、メディアに登場した告発者のみを提訴)。

以前のエントリーでは、この内部告発を行った男性をとりあげた媒体として、「サンデー・プロジェクト」(テレビ朝日)しかフォローできていませんでしたが、もうひとつの媒体は、「週刊現代」6月28日号(講談社)であることがわかりました。8月の新銀行東京による提訴を受けて、「週刊現代」9月27日号には、「内部告発者[元行員]を「守秘義務違反」で訴えた新銀行東京の卑劣な手口」という記事が、掲載されていました。その記事では、新銀行東京による提訴の狙いは口封じだと、週刊現代記者によって書かれています。記事では内部告発を行った横山剛氏が、昨年秋、新銀行東京を退職した背景に、新銀行の幹部・同僚らによるいじめが原因にあったことが指摘されていました。そして今月17日、横山氏の側が、勤務中のいじめなどを理由に新銀行東京を提訴したことが報じられました。

損賠訴訟:新銀行東京を元社員が提訴 「勤務時に虐待」 - 毎日jp(毎日新聞)
 「勤務時に精神的虐待を受けて退職せざるをえなくなった」として、新銀行東京(東京都新宿区)の元社員、横山剛さん(40)=品川区=が17日、当時の上司ら6人と新銀行を相手取り計6750万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。新銀行側は先月4日、「退職後にテレビや雑誌に機密を漏らした」として、横山さんに1000万円の損害賠償を求め同地裁に提訴している。
 訴状などによると、横山さんは04年10月に入行。当時の本店(千代田区)に勤務中、パソコンのデータを消されるなどの嫌がらせを受け、07年10月末に退職した。【木村健二】
 ◇新銀行東京の話
 内容を把握していないのでコメントできない。
新銀行東京の元行員が提訴 集団いじめで自殺未遂 【共同通信】


新銀行東京が男性の提訴に費やす費用には、結果的に、税金が注ぎ込まれることになります。新銀行東京が事実の評価・取捨選択・頒布にかかわったメディアの編集的判断を不問にし、情報源の男性のみを提訴しているのには戦略とでも言うべき理由があるはずです。この提訴に対し、公衆の関心事として、出資者としての都(民)は、説明責任を要求することができるのではないでしょうか。

男性がメディアを通して告発した口利き融資の問題は、現在、口利きと政治献金とのつながりが続々と明るみになっています(新銀行東京に口利きをして、企業から献金をもらった人 - Internet Zone::WordPressでBlog生活)。
| slapp | 興味深い裁判例 | 05:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
読売側vs押し紙問題追求ジャーナリストの裁判、9/1傍聴
新聞販売弁護団パンフ
(画像は新聞販売弁護団作成の押し紙問題を告知するパンフレットより)

読売新聞西部本社の江崎撤志氏が、新聞業界の押し紙問題を報道しているジャーナリスト・黒薮哲哉氏を権利侵害の差止めを理由に訴えている裁判(読売「催告書」裁判)の第3回口頭弁論が、9月1日、東京地裁で開かれた(清水節裁判長)。傍聴席20席は満席で、傍聴できない者もでた。<平成20年(ワ)4874>

この裁判は、かねてより新聞販売店の「押し紙」の問題を報道してきた黒薮氏が、読売新聞西部本社とその管内の販売店との間のトラブルの事実の経過を、販売店側の弁護士から入手した読売側が販売店に送付した文書を引用しつつウェブサイトで公表したことに端を発し、文書を送付した江崎氏が権利侵害であるとして訴えているもの。江崎氏が販売店に送付した文書の削除を黒薮氏に要請してきたため、その事実を含めて公表するため、削除要請の文書も示して経過を公表したところ、江崎氏は裁判所に仮処分を申請。一旦その仮処分が認められたため、現在本裁判に移行しているところだ。原告側は、黒薮氏の行為が著作者人格権の侵害にあたると主張している。(経過を伝えた記事

1日の法廷には、江崎氏の姿はなく、代理人の喜田村洋一弁護士の姿があった。黒薮氏側は、黒薮氏、江上武幸弁護士、市橋康之弁護士が法廷についた。法廷では黒薮氏の弁護団は、権利侵害を訴えるなら表現自体に創作性が必要との主旨を述べた。催告書は著作物にあたるのか、その論拠が話題になったとき、傍聴席の空気がひんやりと止まるような一瞬があった。

喜田村:著作物性の論拠について(今ここで、の意と思われる)明らかにするつもりはないです。書面に書いてあるとおりです。
黒薮:書面のどこなんですか?
喜田村:お答えしません。

両者の手元に書面はあり、わざわざ両者が顔を合わせている口頭弁論のなのに、このやりとりであった。法廷は15分ほどで終了、次回口頭弁論は10月27日、10時30分、東京地裁623号法廷で開かれる。

黒薮氏は江崎氏によるこの「催告書」裁判だけでなく、ウェブサイトの記述を理由に、江崎氏を含む読売側3人と読売新聞社から名誉毀損だとして、2230万円の損害賠償を請求する裁判を、今年3月に起こされている。これを報道した新聞は、ない。

−−−
黒薮氏は自身のウェブサイトで、「常に反論を歓迎します」と色文字で記述しています。このインタラクティブ性(双務性)の重要さに思いが至らないメディア関係者など、いないと思いたいところです。読売側は自らが報道の対象となると、反論することもなく、提訴しました。当サイトは過去にトラックバックを積極的に飛ばしていませんでしたが、この問題に関しては、メディア関係者の真意を知るため、これはというブログ(例)にトラバを飛ばしていきます。トラバを反映してもらえるか等、経過を注視していきたいと思っています。
| slapp | 興味深い裁判例 | 17:27 | comments(0) | trackbacks(2) |
新銀行東京、メディアに登場した告発者のみを提訴
オリコン訴訟に似て、メディアに登場した情報提供者のみを訴える裁判を、新銀行東京が起こしたと報じられています。しかも銀行経営の実態を告発する証言をした情報提供者が、銀行の社会的評価や信用を低下させたという主張だけでなく、機密情報をメディアに漏洩したという点も訴えの論点としているようです。

新銀行東京が元行員を提訴 テレビ、雑誌に「漏えい」(08/30 22:43)(北海道新聞)
 新銀行東京の男性元行員がテレビ番組や週刊誌で機密情報にかかわる発言などをし、守秘義務に違反したとして、新銀行が元行員に情報漏えいの禁止や1320万円の賠償などを求め、東京地裁に提訴したことが30日、分かった。
 元行員は「取材に応じたのは、都民がいかに新銀行で損害を被るか分かってもらう公益のためであり、わたしが受けた不当な扱いを知ってもらうため。訴訟は言論の弾圧だ」と反論している。
 元行員に届いた訴状によると、新銀行側は元行員が2005年4月、銀行に機密の保持や機密資料の返還義務について誓約書を提出したと主張。元行員が退職後の今年6−7月に、テレビ番組に出演して機密情報に当たる会議内容を記録した資料を示したほか、複数の週刊誌に機密情報を伝達したとして、「新銀行の社会的評価や信用が著しく低下した」と損害賠償や機密にかかわる文書、電子記録の返還を求めている。

テレビ番組については、6月8日に放送されたサンデー・プロジェクトです。3月28に物議をかもした400億円の追加出資が決まってしまったことに対して、義憤を感じていた元行員が決意の告発をするという内容の番組だったと記憶しています。

番組や記事を作成したテレビ局や週刊誌の発行社は、訴えの対象外とする根拠はなんでしょうか。テレビ局や発行社は、告発者の証言をもとにして作成した情報を、編集し頒布することにかかわっているのに訴外とすることは、そこに戦略的判断が働いていると、外形的にみえます。

ちなみにWikipediaの公益通報者保護法の項目を見ると、労働基準法上の労働者しか保護しないといったことが書かれていて、その適用対象の狭さに驚きます(社会には労基法上の労働者でない人は沢山います)。

もしもこの場合、守秘義務によって守られるべき利益と秘密の開示によってもたらされる公益性のどちらが重いのかを判断するといった議論に入らず、公益通報者としての法理が援用されず、ただただ守秘義務違反の秘密漏えい者として裁かれるといったことはありうるのでしょうか。経営情報の開示がCSRとして求められている時代なのですが、新銀行東京のHPには、この件に関して、これといった情報は掲載されていません。
| slapp | 興味深い裁判例 | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
黒薮哲哉vs江崎徹志(読売新聞)の著作権裁判、始まる(2)
裁判後、黒薮氏は、これらの法的手段に出てきた読売側の意図を、「新聞販売の内部資料が出てくることを恐れているのではないか」との推測を語っていました。黒薮氏は販売店から入手した数々の資料を駆使して、この十年来、押し紙のタブーを暴いてきた実績の持ち主。読売新聞との因縁は、読売新聞と販売店の改廃をめぐってトラブルになり、地位保全を求めて裁判になった経営者の事件(昨年、販売店の勝訴で確定)も継続的に報道してきたため、浅からぬものがあります。

新聞業界の地盤沈下が明らかな昨今でも、読売新聞は発行部数1000万部を豪語しているので、その系列販売店はその看板を維持するため、苛烈な負担を強いられていると見る向きがあります。「週刊東洋経済」4月12日号の特集「日経新聞を読む人読まない人」には、日経新聞以外の新聞社の現状を分析した記事があって、各新聞社が部数を減らすなか、読売新聞だけがなぜか即売部数(キオスクなどでの販売)を近年急増させていることに疑問をなげかける記事が出ています。

去年10月、読売新聞が朝日新聞、日経新聞と組んではじめた共同サイト「新s」は、配下の販売店淘汰のための布石との説が根強く、今後各新聞社の系列販売店は選別を避けられない情勢です。となると、押し紙問題の駆け込み寺的な存在の黒薮氏のもとに、ディープな情報がもたらされる可能性がみえてきます。新聞業界にとって、販売店淘汰のパンドラの箱が開く時は、もう目の前に来ています。そうした来るべき事態への「怖れ」が、読売新聞になかったか否か−ー。

ただ、対読売新聞の問題は、この裁判の一面にすぎません。黒薮氏は、今回のような著作権の拡大解釈が許されるなら、「調査報道で内部資料が出されたときにも報道ができなくなってしまう」との懸念を語っていました。ことは報道のみならず、すべての者にブーメランと化して影響を及ぼす問題です。食品の偽装表示問題では、行政に内部告発したものの動きがなく、報道機関に持ち込んではじめて表面化したものがあったといいます。著作権の拡大解釈は、告発報道を補強するための証拠を表に出すこと、持ち込むこと、いずれも萎縮させてしまうでしょう。

オリコン訴訟や『靖国』上映中止問題では、メディア関係者や労組から「言論・表現の自由を守れ」といくつもの声があがりましたが、この裁判についても何らかのアピールの声はあがってくるでしょうか。今回の読売新聞側の提訴を、新聞協会は、新聞労連は、一新聞記者は、どのように評価するでしょうか。皆さんもそうした関係者に遭うチャンスがあれば、ぜひ話題にしてみてください。将来、メディア史の教科書で言及されそうな歴史的な裁判が始まった、そんな気がします。

黒薮氏は早速、MyNewsJapanに手記を書いていました。
読売言論弾圧事件、著作権裁判始まる 「催告書」公表権争点に
◇参考
読売新聞がジャーナリストを“言いがかり”で言論封殺(前編) : 日刊サイゾー
読売新聞がジャーナリストを“言いがかり”で言論封殺(後編) : 日刊サイゾー
| slapp | 興味深い裁判例 | 20:33 | comments(0) | trackbacks(10) |
黒薮哲哉vs江崎徹志(読売新聞)の著作権裁判、始まる(1)
読売新聞西部本社(以下、読売新聞)社員の江崎徹志氏がジャーナリストの黒薮哲哉氏に対し、著作権侵害を理由に仮処分を申し立てていた裁判は、本裁判に移行し、その第一回口頭弁論が4月14日、東京地裁(清水節裁判長)で開かれました(事件番号・平成20年(ワ)4874)。傍聴席には、フリーの記者のほか、特製のメモ帳をもったメディア関係者と思しき人の姿もみられました。黒薮側代理人は、市橋康之弁護士と大西啓文弁護士。読売側代理人は、三浦和義氏の弁護など名誉毀損の分野で有名な、喜田村洋一弁護士です。

この裁判の発端は、これまで新聞社の押し紙問題(新聞社の発行部数偽装につながる販売店への部数を割り増しての押し付け行為)を報道してきた黒薮氏が、読売新聞と現在トラブル渦中の福岡のある販売店の代理人弁護士との間で交わされた文書を入手、自らのサイト(新聞販売黒書)で掲載したこと。するとその文書を作成した読売新聞法務室長・江崎徹志氏から削除を要求する催告書が到着します。(*催告とは、ある人に対し一定の行為を請求すること)

そこで黒薮氏はさらにその催告書をサイトに掲載し事態を伝えようとしたところ、江崎氏は著作権侵害を理由に催告書削除の仮処分を東京地裁に申請、そして江崎氏の仮処分が認められたため、黒薮氏は催告書をサイトから削除。その後黒薮氏は催告書掲載が著作権侵害にあたるのか正式に裁判で争うために起訴命令申請を行い、江崎氏の提訴を要求。当初の申し立てが本裁判に移行し、江崎氏が黒薮氏を(著作権)侵害差止で訴えているというのが、これまでの経過です。仮処分が認められたことについて市橋弁護士は、裁判所としては、とりあえず著作物ふうだったら仮処分を出して、あとは本裁判でという考え方だと思うと、重く受け止めることはないという解釈でした。

さらに、この侵害差止裁判以外に、江崎氏を含む読売新聞社員3人と読売新聞社は、黒薮氏に対して、サイト上の記述をめぐって名誉毀損を理由に2230万円の損害賠償を請求する裁判を埼玉地裁に起こしています。5月9日に始まるという裁判は、コチラで記事になっています。読売が「押し紙」報道のジャーナリストを突然提訴 主宰サイトの表記に2200万円要求。新聞社がその病巣を追及してきたジャーナリストを裁判に訴えたこと、しかも高額請求訴訟まで起こしたことは、まさにSLAPPの構図です。

14日の裁判では、原告の江崎氏から提出されている書面に対して、裁判長から「どういう観点から、どこの点に著作性が認められるのか、主張をつめていただきたい」と、ひと言注文があり、次回期日を5月28日と決めて終わりました。次回は電話会議で開かれることになったので、傍聴はできません。
| slapp | 興味深い裁判例 | 20:20 | comments(0) | trackbacks(7) |
サンプロ・コメント訴訟あれこれ
すでに扱ったように、テレビ出演時のコメントをめぐって、安倍前首相の秘書らが、ジャーナリストの山田厚史氏と朝日新聞社を名誉毀損で訴えていた裁判は、秘書らが当初の請求をとり下げる一方で、山田氏が「テレビでの発言で、原告らが誤解するような表現があったとすれば遺憾の意を表する」と表明することで、2月21日に和解が成立しました。

和解を報じた大手メディア(朝日新聞含む)もありましたが、とりたてて論評は見かけていません。率直に言って、和解という結末に、なによりも支援者らがサイトで大勝利であると強調していることに違和感を禁じえませんでした。そうした表現が許されるなら、秘書らの側とて、金銭的請求・謝罪広告のいずれも放棄したとしても、和解という形式を得ただけで「勝利」と呼ぶに値するかもしれません。訴訟対象には朝日新聞社も含まれていて、山田氏の雇用責任を問われたわけですが、和解の席にはついたわけです。朝日新聞社は、いいがかりとも思える裁判においても、不当性を主張することには、こだわらなかったのです。

民主主義社会を健全ならしめるためには、自由な言論の流通が不可欠で、それを妨げるさまざまな圧力に対抗するコストを、各人が担わなければなりません。そうした民主主義のコストを負担する矜持や気概が、大きな組織に属する人間ほど、失われているように思えます。それは穿った見方なのでしょうか。映画『靖国』の上映中止をめぐって、ジャーナリストの江川昭子氏は、「この萎縮現象は、表現の自由の自殺行為だ」とする文章を公開し、「言論・表現・報道の自由を享受している企業や個人は、そうした自由を守り、国民の知る権利に応える責務を負っている」と書いていました。大きな組織に属せば、より多くの人々に情報を届けられる可能性がありますし、影響力ももてるかもしれない。なによりも生活が成り立ちます。しかしそれらを言い訳にして、あっさりと摩擦を回避したり、他へ圧力をかけるといった行動パターンが散見されます。恫喝的訴訟を起こす側の主体の行動パターンが、まさにそういったものなのです。

サンプロ・コメント訴訟の終結を迎えて3月18日に報告会が開かれたのですが、管理人は足を運ばなかったので、その様子を当ブログで伝えることはありませんでした。なんとも整理できない違和感を書くべきか悩ましかったのですが、やはり書きとめておきましょう。例えばライブドアのサイト内でPJニュースを主宰するジャーナリストの小田光康氏も、今回の裁判について釈然としない感覚を、「livedoor ニュース - 安倍前首相陣への完璧なるマスコミ人の敗北、公共の大事を駄々と自己矛盾に」と題する記事で書いています。見出しでは何を意味するか読み取れないですが、中身はこの訴訟を関心をもって見守っていた一部の人々の感情を、代弁しているものでしょう。サンプロ・コメント訴訟は、秘書という偽装の回路を介した公権力の側からの、相手を選別しての圧力に映りました。公権力に疑問を投げかける言論の精度はどの程度まで要求されるのかといった論点を掘り下げる契機にも思えました。が、それは外野の思い入れでもありました。

3月18日の報告会の様子は、「銀行の貸し手責任を問う会」のサイトでも見られます。気になったのは、山田氏の裁判のために集めたカンパが残っていて、今後の言論活動の支援に使ってもらいたいとあることです。また、記者クラブが一致団結してたたかわなかったとの指摘も記憶に残ります。ちなみに安倍前首相の秘書らが絡んだ裁判は、先月27日、こんな判決も出ていました。
asahi.com:安倍前首相の元秘書の請求棄却 週刊現代名誉毀損訴訟 - 社会
 安倍前首相の元秘書が、「週刊現代」(講談社)の連載記事で名誉を傷つけられたとして、執筆者でフリージャーナリストの松田賢弥氏に慰謝料1000万円と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決が27日、山口地裁下関支部であった。藤本ちあき裁判官は「原告の発言内容がおおむねその通りに掲載されている」として請求を棄却した。
 判決によると、松田氏は06年8〜10月、「週刊現代」に「安倍晋三『空虚なプリンス』の血脈」と題する連載記事を計8回にわたって掲載。安倍氏が元秘書に、実弟の岸信夫参院議員が04年7月の参院選に立候補することに反対する発言をしたなどと記した。
 元秘書は「虚偽の事実を書かれ、地元での声望は地に落ちた」と主張。松田氏側は「取材対象の発言内容から乖離(かいり)するものではない」などと請求の棄却を求めていた。
| slapp | 興味深い裁判例 | 04:18 | comments(0) | trackbacks(1) |
サンプロ・コメント訴訟の和解内容全文
朝日新聞社と記者の山田厚史氏が、テレビ朝日の番組「サンデープロジェクト」の、日興コーディアル証券の粉飾決算問題をあつかった回に出演した際の発言をめぐって、安倍晋三首相(提訴当時)の秘書らから、名誉毀損であると損害賠償などを求められていた裁判は、裁判所の和解勧告を経て、2月21日、和解に至っていました。山田氏を個人的に支援するチームAAAのサイトのトップページにて和解内容が解説されていますが、細かな字句の内容そのものはフォローされていませんでした。和解内容は下部引用部のようなものと判明したのでアップします。

今回の裁判は、山田氏の発言が発端であり、かつ、同内容を示唆する記事がその時点で既に世に出ていて、選別されたかのように矢面に立たされたこともあって、山田氏個人が目立つのですが、被告の対象には朝日新聞社も含まれていたことも忘れてはならないポイントです。ちなみに今回の裁判で山田氏側は、不当提訴を訴えるにあたって、ニューヨーク・タイムズvsサリバン事件の連邦最高裁判決、北方ジャーナル事件の最高裁大法廷判決などを援用していました。

原告の請求は、3476万円の損害賠償と謝罪広告の掲載というものだったのですが、この裁判の開廷にあたってかかる印紙代は12万5千円、これに弁護士費用を加えた額が、およそ今回の提訴にあたって、原告にかかったコストとなります。山田氏は、3月6日に、日本外国特派員協会で記者会見を行っているのですが、海外の記者がこの推移をどのように見ているのか、気になるところです。

<和解条項>  平成20年2月21日
1.被告山田は、テレビ朝日のサンデープロジェクトにおける被告山田の発言中に、原告らが誤解するような表現があったとすれば、遺憾の意を表する。
2.原告らは、その余の請求を放棄する。
3.原告らと被告らの間には、本件に関し、何らの債権債務がないことを確認する。
4.訴訟費用は各自弁とする。 以上。

追記
オーマイニュースに日本外国特派員協会での会見について記事が出ていました。
朝日新聞社が貫く「ジャーナリストの自己責任論」 - OhmyNews:オーマイニュース
| slapp | 興味深い裁判例 | 23:59 | comments(0) | trackbacks(1) |
サンプロ・コメント訴訟、和解で決着
テレビ出演時の発言をめぐって安倍元首相の秘書らから朝日新聞社と山田厚史氏が訴えられていたサンプロ・コメント訴訟は、2月21日に和解が成立したと山田厚史氏を支援する会・チームAAAのサイトで発表されました。支援する会は、実質全面勝訴と表現しています。朝日新聞社も和解に応じたということになります。

1ヵ月も前のことになってしまいますが、1月25日の東京地裁での結審日をふりかえりましょう。裁判は意外な展開を迎えていました。結審するにあたり、山田氏は最後の意見陳述を5分ほど行いました。山田氏は1月1日をもって朝日新聞を定年退職し、嘱託として再雇用されたそうで、それもあってか、意見陳述は37年間の記者生活の(ひとくぎりの)卒業の辞の感を呈していました。番組で問題となった発言を述べた経緯だけでなく、ジャーナリズムをとりまく時代状況の変化についても語っています。最終陳述の骨子は、チームAAAのサイトで読めます。

TEAM-AAA=「山田さんの被告陳述」=

山田氏が朗々と意見陳述をしたあと、支援者からひとしきり拍手が起こり、傍聴席には、ひとまず審理が終わったと安堵したような空気が流れました。しかし藤下健裁判長が、「裁判所としては、職権で和解を勧告したいのですが」と切り出したことで、一気に空気が変わりました。和解勧告をされる展開に、椎名麻紗枝弁護士は、とても驚いているようでした。「和解が成立しなかったら判決を求めるということでどうか」と裁判長は促し、その場で翌月の和解交渉の期日が決まりました。

裁判後の集会では、週刊朝日編集長の山口一臣氏が安倍晋三元首相との因縁を、ジャーナリストの歳川隆雄氏が被告となった名誉毀損裁判の経験などを講演しました。概要はコチラで読めます

当日はジャーナリストの町田徹氏が来ていて、ひとことコメントをしたのですが、和解勧告直後にもかかわらず鋭い内容でした。「和解となってくると、山田氏と会社との利害は対立してくるだろう。会社としての朝日新聞社には多少のことに目を瞑って終結を優先するという判断がありうる」。山田氏側は、提訴自体が却下されるべきであると主張していましたから、会社側が和解を優先させたとき、対応に齟齬をきたす可能性があると指摘したのです。

和解成立を伝えるチームAAAのサイトによると、山田氏は和解にあたり、「テレビでの発言の中に原告らが誤解するような発言があったとすれば、遺憾である」と表明、秘書らは当初の請求、3476万円の損害賠償と謝罪広告掲載の請求を取り下げ、和解が成立したとあります。和解内容の詳細について、引きつづき、その内容やこの終結に対する海外メディアの反応を、今後もフォローするつもりです。

◇参考
livedoor ニュース - 「アサヒ」の記者へ、「アベ」の恫喝訴訟。結審の結果。(下)
| slapp | 興味深い裁判例 | 10:29 | comments(0) | trackbacks(3) |
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